【読書感想文】大島 靖美 『生物の大きさはどのようにして決まるのか』


大島 靖美 『生物の大きさはどのようにして決まるのか: ゾウとネズミの違いを生む遺伝子』

内容(「BOOK」データベースより)
絶滅した恐竜には巨大なものがいた。現在の世界でも巨大なクジラや樹木がある。一方、肉眼では見えない小さな生物もたくさん存在する。生物の大きさは多様であり、どの生物にとっても重要な特徴となっている。では、生物の体の大きさはどのようにして決まるのか。全容は複雑で未解明な部分が多いものの、その仕組みが少しずつわかってきた。本書では、現在までに明らかになった大きさ決定の遺伝子レベルの話から、ペットや農作物などの大きさを自由に変えるような応用的な話まで、わかりやすく解説する。

タイトルそのまんま、生物の大きさがどうやって決まるかについて解説した本。
専門的な生物化学の用語が並ぶので、かわいい表紙のわりに内容は難解。ぼくにはよくわからなかった。

種の違いによる大きさの違い、
遺伝子の突然変異や品種改良による違い、
肥満や栄養欠損のような生活習慣からくる大きさの違い、
それぞれについて述べられている。
なるほど、ひとくちに「生物の大きさ」といってもいろいろあるんだね。


ぼくが興味を持ったのは動物と植物の大きさ・寿命の違いについて。
陸上で最大の動物はゾウで、最大で体長7メートル。
海で最大のシロナガスクジラが30メートル。最大の恐竜も30~50メートルくらいだったといわれている。
ところがいちばん大きい植物は、地面からの高さだけで80メートル以上。根っこも含めたら100メートルくらいになる( シャーマン将軍の木 )。

こんなにも植物が大きくなれるのは、長生きできるから。
動物だと、一部のカメや貝が150年くらい生きるのが最長(諸説あるけど長く見ても200年くらい)。
ですが植物は1,000年以上生きるものもザラ。我々の身近な植物であるマツやスギでも5,000年くらい生きるそうだ。
文字通り、けた違い。

なぜ植物はそんなにも長生きするのか。

 このように、わからないことはいろいろあるが、樹木の最長寿命が数千年という驚異的な長さであり、動物の最長寿命約150年の20~30倍長いことは確かであろう。これは、動物と植物の違いとして大変興味ある点である。どうして、植物は桁違いに長い寿命を持てるのであろうか。
 植物においても、1年生の植物(草)では、植物体全体が死ぬし、多年生の草では地上部が毎年冬に枯れ、樹木でも落葉樹では葉は毎年枯れる。植物生理学に関連するいろいろな本によると、これらは動物の場合と似ていて、基本的に遺伝子に書き込まれた、老化に基づく死(プログラムされた死)と考えられている。しかし、多くの樹木の死はこれと違い、外的要因によるものであろうとされる。それが桁違いの長寿の理由であるらしい。樹木では、その体の細胞の大部分が死んでいても、分解されにくい木部によって体を支えることができ、また動物と違って大半が死んでいる重い体を引きずって動く必要がないことも、長寿命が可能な理由と考えられる。

樹木って、幹の中心部の細胞はとっくに死んでいるんだって。
なるほど、「からだの一部(というか大部分)が死んでいても、残りの部分が生きていける」ってのが植物が長生きできる秘訣なんだね。
動物だったら内蔵が死んだら、いくら皮膚が生きていてもすぐに死んじゃうもんね。


ぼくはこないだ神戸の摩耶山という山に登った。そこには摩耶の大杉という大木が立っているんだけど、その樹は1976年に火事に遭って枯死してしまったそうだ。
なのに、それから40年経った今でもしっかりと建っている。
からだの一部どころか、100パーセント死んでもまだ立っていられるってすごいですよね。
動物でそんなことできるのは武蔵坊弁慶ぐらいだもんね。


あと動物の場合は脳細胞が死んだらもう食べ物をとれなくて死んでしまう(脳死状態で延命措置を施されている人間を除く)。
植物の場合はそもそも脳が無くて、栄養をとる活動が末端でもできるようシステム化されている。
これも長生きできる要因だね。

これって組織にも同じことが言えるよね。
ワンマン社長がいる会社のようにトップがすべてを牛耳っている組織は意思決定がスピーディーだけど長生きはできない。
末端組織がそれぞれ意思決定をおこなうボトムアップ型の組織は、全体を動かすのはたいへんだけど、どこかがつぶれても他がカバーできるのでトータルで見ると長生きする。


......と、ばかなビジネス本だったらこんなふうに何の論理的整合性もないままむりやりビジネスに結びつけて「だからボトムアップ型組織がいいんだぜ」と、もっともらしい結論を引き出すことだろう。

でもぼくははっきり言う。
植物は植物! 組織は組織!


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