旅行グルメ本みたいなタイトルだけど、旅行の要素はほとんどなく、食べ物エッセイ。
食べ物エッセイとはいえ、さすがはチェコで幼少期をすごし、ロシア語同時通訳者として活躍した米原万里。単なるうまいものコレクションでは終わらせない。
ヨーロッパ、ロシアの食べ物。
昔の食べ物。
おとぎ話に出てくる食べ物。
いとも簡単に場所を超え、時を超え、虚実を超え、読み手をはるか遠くの食卓へと連れていってくれる。
絵本に出てきた食べ物ってほんとにおいしそうに見えるんだよねえ。
有名なところだとぐりとぐらのホットケーキとか。
「バターミルク」も歓楽的な響きだよねえ。実際はまずいらしいけど。
西洋料理に欠かせないと思われているジャガイモが、ヨーロッパで食べられるようになったのは実は最近である(むしろヨーロッパでは嫌われつづけていた)ことを調べ上げた『ジャガイモが根付くまで』は実に感動的なノンフィクション。
特に印象に残ったのは、日本でもおなじみの絵本『ちびくろサンボ』の舞台を考察した章。
あの話の舞台ってどこだと思ってた?
アフリカ?
ぼくもそう思ってた。
絵本のイラストでは明らかにサンボはブラックアフリカ(南アフリカ)系の黒人。
でも、「サンボ」やその両親「ジャンボ」「マンボ」という名は南米やネパールでよくある名前。
虎が出てくるけど、虎が生息しているのはアフリカではなくアジア。
物語の最後にホットケーキを食べるが、物語が書かれた時代にホットケーキを食す習慣があったのはアメリカやイギリス。
アフリカ? 南米? アジア? 英米?
はたして『ちびくろサンボ』はどこの国のお話なのか?
答えは、この本で。
推理小説のような名推理が味わるよ。
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