【読書感想文】ジェフリー・アーチャー『プリズン・ストーリーズ』

ジェフリー・アーチャー『プリズン・ストーリーズ』

内容(「BOOK」データベースより)
決して飲んではいけないペットボトルの水を妻に飲ませた男の運命―「この水は飲めません」。巧妙に儲けを隠す人気イタリアン・レストラン主―「マエストロ」。豊かに肉付けされたキャラクターと緻密な構成、そして待ち受ける意外な結末―読者をとことん楽しませる12編。多くは、著者が実際に服役者から聞いた話が元になっている。転んでもタダでは起きない、作家魂あふれる待望の短編集。


 イギリスの上院議員だった筆者が偽証罪で逮捕されたときに、獄中で聞いた話をまとめた短篇集。
 逮捕さえも利用してしまう、まさに「転んでもただでは起きない」の精神がすごい。
 日本でも花輪和一『刑務所の中』とか安部譲二『塀の中の懲りない面々』とか、獄中の体験を書いた本はあるけど(読んでませんが堀江貴文も書いてましたね)、そこで書かれていたのは「獄中の生活」であって、「どういう犯罪をして捕まったのか」はほとんど触れられていない。

『プリズン・ストーリーズ』では、「どのような犯罪をして捕まったか」どころか、「どのような犯罪がばれなかったか」「獄中でどんな悪いことをしたか」まで書かれている。
 もちろん名前を変えたり脚色を入れたりはしてるんだろうけど、「どこまでほんとかわからない」ところもこの本の魅力だ。


 収監されていることを逆手にとって「その時間は刑務所にいた」という鉄壁のアリバイを盾に殺人を企てる『アリバイ』は、長編にしてもいいぐらいの魅力的な設定。

 脱税をするレストランと税務署員の攻防を描いた『マエストロ』もおもしろかった。
「レストランの脱税を見破るために税務署員がクリーニング屋を捜査したのはなぜ?」
 脱税という派手さのない犯罪だけど、至極のミステリ。


 なにより良かったのが離婚訴訟を題材にした『ソロモンの知恵』。
 あの手この手で資産家の夫から財産を奪い取ろうとする妻に、最後の最後に痛快な判決が下るのは、「裁判官よくやった!」と快哉を叫びたくなる。
 O・ヘンリーのような見事などんでん返しが決まっている。


 伝聞という形ではあるが、短篇の名手ジェフリー・アーチャーらしさが詰まった作品集。

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