ジェフリー・アーチャー『プリズン・ストーリーズ』
イギリスの上院議員だった筆者が偽証罪で逮捕されたときに、獄中で聞いた話をまとめた短篇集。
逮捕さえも利用してしまう、まさに「転んでもただでは起きない」の精神がすごい。
日本でも花輪和一『刑務所の中』とか安部譲二『塀の中の懲りない面々』とか、獄中の体験を書いた本はあるけど(読んでませんが堀江貴文も書いてましたね)、そこで書かれていたのは「獄中の生活」であって、「どういう犯罪をして捕まったのか」はほとんど触れられていない。
『プリズン・ストーリーズ』では、「どのような犯罪をして捕まったか」どころか、「どのような犯罪がばれなかったか」「獄中でどんな悪いことをしたか」まで書かれている。
もちろん名前を変えたり脚色を入れたりはしてるんだろうけど、「どこまでほんとかわからない」ところもこの本の魅力だ。
収監されていることを逆手にとって「その時間は刑務所にいた」という鉄壁のアリバイを盾に殺人を企てる『アリバイ』は、長編にしてもいいぐらいの魅力的な設定。
脱税をするレストランと税務署員の攻防を描いた『マエストロ』もおもしろかった。
「レストランの脱税を見破るために税務署員がクリーニング屋を捜査したのはなぜ?」
脱税という派手さのない犯罪だけど、至極のミステリ。
なにより良かったのが離婚訴訟を題材にした『ソロモンの知恵』。
あの手この手で資産家の夫から財産を奪い取ろうとする妻に、最後の最後に痛快な判決が下るのは、「裁判官よくやった!」と快哉を叫びたくなる。
O・ヘンリーのような見事などんでん返しが決まっている。
伝聞という形ではあるが、短篇の名手ジェフリー・アーチャーらしさが詰まった作品集。
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