読書感想文とエッセイとほら話
2023年に読んだ本の中からベスト12を選出。
なるべくいろんなジャンルから。
順位はつけずに、読んだ順に紹介。
小説。
重厚な大河小説を三冊分読んだぐらいのボリューム感。戦中戦後がどういう時代だったのかを鮮明に伝えてくれる小説。
ルポルタージュ。
オウム、エホバ、統一教会、ヤマギシというカルトの2世信者にスポットをあてた本。長年カルトの取材をしているだけあって、深いところまで切り込んでいる。
これを読むと、エホバや統一教会やヤマギシってオウムよりもえげつないことしてるんじゃないの? とおもってしまう。
ある男の殺害を決めたふたりの女性。「はたしてうまく殺せるのか」「予期せぬ事態が起こって計画通りにいかないんじゃないか」「うまくごまかせるのか」「ばれそうになってからはうまく逃げられるのか」と、中盤以降はずっと緊張感が漂って読む手が止まらなかった。まるで自分が追い詰められているような気分だった。
ノンフィクション。
ここ三十年の日本の没落っぷりを嫌というほどつきつけてくれる。
「まともな政治をする」「高齢者に金を使うより教育に金をかける」をすればいくらかマシにはなるのだろうが、それができそうにないのが今の惨状なわけで……。
ホラー小説。
怪異系のホラーってぜんぜん好きじゃないんだけど(まったく怖いとおもえないので)、これは「恐ろしい怪物の話」かとおもわせておいて「生きている人間が静かに募らせる恨み」の話だった。おお、怖い。とくに妻帯者は怖く感じるんじゃないかな。
日本で最も入るのが難しい大学である東京藝大。謎に包まれた藝大生の生態を解き明かしていく一冊。超大金持ち、変人、奇人、天才が集う大学。自分とはまったく縁のない世界だからこそ、読んでいて世界が広がる気がして楽しい。
太平洋戦争時、特攻を命じられるも9回出撃して生還した兵士の話。
日本軍は組織としては大バカだったし参謀や司令官には大バカが多かったけど、特攻が戦術的にダメであることを見抜き、勝利をめざしてきちんと考えられる賢人たちもちゃんといたことを教えてくれる。
ミステリ。
前半は「そううまくいかんやろ」と言いたくなる展開だったが、その“うまくいきすぎ”にちゃんと理由があったことが後半で明らかになる。登場人物が身勝手な人物だらけで、後味も悪い。そういうのが好きな人にはおすすめ。
今話題になっているくじ引き民主制について様々な立場からメリット・デメリットを語った本。職業政治家がぜんぜん有能でない(どうしようもないポンコツも多い)のは誰もが知るところ。
読んだ感想としては、もちろんデメリットはあるけど、メリットのほうが大きいんじゃないかな。特に現行の投票制との併用はすぐにでも実施してみてほしい。
人間の意志はきわめて軟弱だから、何かを続けたかったら決心みたいな不確かなものに頼るのではなく、習慣を変えなければならない。習慣を変えるには行動を変えなければならない、行動を変えるには報酬(必ずしも金銭ではない)という内容。
自分や他人の行動を変えたい人におすすめ。
エボラウイルスとの闘いを描いた息詰まるレポート。エボラウイルスが新型コロナウイルスのように世界中に拡がらなかったのは、狂暴すぎて拡がる前に感染者が死んでしまうから。だが、今後より拡がりやすいウイルスに変異しないとも限らないという……。
不況や経済危機に陥ったせいで多くの人が死ぬことがある。だが、そうならないこともある。恐慌なのに死亡率が死なない国もある。
かんたんに言えば「国や大企業のために引き締めをおこなえば国民は多く死ぬし復興も遅れる。国民の健康、就業、福祉などに金を使えば死亡率は抑えられるし復興も早くなる」ことを数々のデータから明らかにしている。ところで、今の日本はというと……
来年もおもしろい本に出会えますように……。
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