青木 淳一
ダニの研究者による、ダニ入門エッセイ。入門したくないけど。
いやあ、しかしおもしろかった。ダニのことをぜんぜん理解していなかったことをつくづく思い知らされた。まあ四六時中ダニのことばかり考えている人生なんて嫌だけど。
なんせダニが昆虫でないってことすら知らなかった。クモと同じ節足動物なんだって。よくひとくくりにされるノミは昆虫だけど、ダニは昆虫じゃない。
そしていちばん意外だったのがこの事実。
なんとほとんどのダニは人の血を吸わない。知らなかったー。むしろ「人の血を吸う」ことこそがダニの定義だとおもっていた。
しかも血を吸うダニにとっても、積極的に人の血を吸いたいわけではないようだ。
ダニが吸いたいのはネズミの血。ネズミの血が吸えない状況になってはじめて人間の血を吸うようになるのだ。主食がなくなったからやむなくおいしくない非常食に口をつけるようなものか。
まあねえ。人間の身体なんて隠れるところ(毛)は少ないし、服は着替えられるし、水に浸かったりもするし、見つかったらつぶされるし、ダニからしたらぜんぜん快適な住まいじゃないよね。ぼくがダニでもやっぱりネズミを選ぶ。
そういや犬を飼っていたことがあるけど、室外犬だったからときどきダニがついていたなあ。薬を飲ませたりノミとり首輪をつけさせていても、それでも目の中とかおなかとかにいるんだよね。たっぷり血を吸って腹がぱんぱんになったやつ。犬はかゆそうにするんだけど犬の足ではダニはとれないから、あれも快適な住まいだったんだろうな。
とったダニをつぶすのは気持ち悪かったけどちょっと快感でもあった。ダニをつぶすと必ず犬が見にくるんだよね。人間も取れた耳垢とか出したウンコとかをつい見ちゃうけど、犬も同じ気持ちなのかね。くさいもの見たさというか。
【警告】「できれば知りたくなかった」情報もたくさんあるので、ここからはダニが嫌いな人は要注意。まあたいてい嫌いだとおもうが……。
我々の身近にどれだけダニがいるかを実験によって確かめた話。
開封した食品を輪ゴムでしばったぐらいだと、ダニは余裕で中に入って繁殖するんだそうだ。うげえ。知りたくなかった。もちろん無害なダニだし、仮に人を刺すダニだとしてもダニは人の体内では生きられないので心配する必要はないらしいけど。
山や森の中だとヒトの足の裏ぐらいの面積にダニが1,000匹以上いることもあるらしく、我々が認識していないだけでこの世はダニだらけなのだ。
我々の顔にもダニが棲息しているらしいしね。こいつらは細菌から肌を守ってくれるいいやつ。この本には、ダニが人の役に立っている例もいくつか紹介されている。とにかく悪い印象が先行しがちだが、トータルで考えるとダニはむしろ益虫なのかもしれない。
著者が、建設会社の社長らといっしょに「なるべく自然の姿に近い森を残した公園」を市に寄贈した話。
ぼくも子どもが生まれて公園を利用するようになってよくわかったけど、公園って憩いの場どころかむしろ厄介なものとおもってる人が多いんだよなあ。
ほんと、世の中には公園で子どもや若者が遊ぶことを蛇蝎のごとく憎んでる人がいる。そのせいでうちの近所の公園なんてそこそこの広さがあるのに「ボール遊び禁止」と書いている。以前、小学一年生とドッチボールをしていたら警察官がやってきて注意された。わざわざ通報した人がいるらしい。一年生のドッチボールまでもが「危険」なんだそうだ。
そのくせ喫煙やポイ捨ては禁止じゃなくて「ご遠慮ください」と書いてあるんだから、バカなんじゃないかとおもう。
かくしてバカ市民のバカ苦情のせいで花火禁止、スケボー禁止、ボール遊び禁止となっている。「他の人のご迷惑になる行為はおやめください」でいいのに。
だってさ、花火にしたってロケット花火を公園の外に飛ばしたり、深夜にでっかい音の鳴る花火をするのはそりゃいかんけど、水を持ってきて公園のすみっこで手持ち花火をしてごみをぜんぶ持ち帰る行為の何がいけないの? 結局ぜんぶ程度の問題なのに、思考停止してるやつが責任取りたくないばかりに全面禁止にしちゃうんだよね。ああ、やだやだ。
この本に書かれている例、役所の人の気持ちもわかるけど、それにしたってあまりにも腑抜けた態度だとおもう。
公園に犬の糞があるのも、痴漢が出るのも、落ち葉が火事になるのも、それ全部公園のせいじゃないじゃん。糞の始末をしない飼い主や痴漢やタバコのポイ捨てをするやつのせいでしょ。なのに公園から林をなくせってのは「電車は痴漢が発生するから電車を動かすな!」ぐらいの暴論なのに、相手が行政だとなぜかその暴論が通っちゃうんだよね。
ぼくが子どもの頃、近所の公園はその下が急斜面になっていて雑木林があった。さらにその雑木林を抜けると川に出られた。なのでいつも雑木林や川で遊んでいた。あれはいい環境だったなあ。ブランコやすべり台で遊ぶのなんか五歳ぐらいまでで、小学生に必要なのは「だだっ広い広場」や「手入れされていない雑木林」なんだよね。
ほんと、遊具を作る金があるなら、なんにもない土地を作ってほしいよ。
その他の読書感想文は
こちら