2021年12月27日月曜日

2021年に読んだ本 マイ・ベスト12

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 2021年に読んだ本は110冊ぐらい。

 去年は130冊ぐらいだったのでちょっと減った。おうち時間が減ったからかな。

 その中のベスト12。

 なるべくいろんなジャンルから選出。
 順位はつけずに、読んだ順に紹介。


堀江 邦夫
『原発労働記』


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 ノンフィクション。

 いくつもの原発で作業員として働いた著者による渾身のルポルタージュ。まさに命を削って書かれている。
 ここに書かれている原発の実態は、ごまかしと隠蔽ばかりだ。原発の管理がいかにずさんかがよくわかる。

 この本を読んでまだ「日本に原発は必要なんだ」と言える人がいるだろうか。



石井 あらた
『「山奥ニート」やってます。』


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 エッセイ。

 廃校になった小学校の分校で、ニートたちが集まって集団生活を送っている。その日々をつづったエッセイ。ぼくもかつては無職だったが、きっとその頃こういう人たちがいると知ったら気が楽になっただろう。

 山奥ニートという生き方に眉をひそめる人もいるだろうが、ぼくはこういう生き方を選ぶ人がいてもいいとおもう(ただし我が子が山奥ニートになりたいと言いだしたらやっぱり反対するとおもう)。本当の〝一億総活躍社会〟ってこういうことだとおもうんだよね。


前野ウルド浩太郎
『バッタを倒しにアフリカへ』


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 ノンフィクション。

 文句のつけようがないぐらいおもしろい。「おもしろい本」は多いし「すごいことをやっている本」も多いけど、「おもしろくてすごいことをやっている本」はそう多くない。これは類まれなるおもしろくてすごい本。

 近い将来、この人がアフリカを救うとぼくは信じている。


ブレイク・スナイダー
『SAVE THE CAT の法則』


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 ハウトゥー本なんだけど、なんか妙に感動してしまった。

 ロジカルに、手取り足取り脚本の書きかたを教えてくれる。
 これを読んだら自分にもハリウッド映画の脚本が書けるような気になってしまう。

 ストーリーをつむぎたいとおもっている人にとっては読んでおいて損はない本。


マルコ・イアコボーニ
『ミラーニューロンの発見』


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 ノンフィクション。

 他人の行動を観察しているときにまるで自分がその行動をとっているかのように活性化する脳細胞・ミラーニューロンについて書かれた本。

 この本を読むと、我々の行動がいかにミラーニューロンによって支配されているか気づかされる。人間はものまねによって動くのだ。笑っている人を見れば楽しくなるし、暴力映像を見れば暴力的になる。「暴力映像を観たからといって暴力的になるわけじゃない! 人間はそんなに単純じゃない!」と言いたくなる気持ちはわかる。だが、残念なことに人間は単純なのだ。目にしたものを無意識に真似してしまうのだ。


佐藤 大介
『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』


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 ノンフィクション。

 2020年に読んだM.K.シャルマ『喪失の国、日本』も猛烈におもしろかったが、この本もすばらしい。インドに関する本はどうしてこんなにおもしろいのか。

 インドのトイレ事情について語りはじめるんだけど、そこから話がどんどん広がっていって、政治、経済、貧困、犯罪、宗教対立、民族問題、環境問題、そして今なお根深く残るカーストなどについて斬りこんでいく。
 内容ももちろんおもしろいんだけど、なによりワンテーマを軸にいろんな問題に切りこんでいく手法が画期的。


橋本 幸士
『物理学者のすごい思考法』


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 気鋭の理論物理学者によるエッセイ。

 餃子のタネと皮を残さずに包むための最適解を求めたり、エレベーターに何人まで詰め込めるかを計算したり。最高なのは「僕は1時間、ニンニクを微分し続けていたのだ」という強力なフレーズ! これまでニンニクを微分しようとおもった人いる?

 物理学者の、常人離れした思考の一端に触れることができるエッセイ。


伊藤 計劃
『虐殺器官』


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 SF小説。

 今まで読んだSFの中でもトップクラスにおもしろかった。はじめから最後までずっと興奮した。主人公が属する暗殺組織もおもしろいが、なによりターゲットであるジョン・ポールがおこなっている「人々に殺し合いをさせる手法」のアイデアがすごい。
 ほらの吹きかたがすごくうまかった。ぜんぜん現実的じゃないのに、でも「ここじゃないどこかにはこういう世界もありそう」とおもわせてくれる。


荒井 裕樹
『障害者差別を問いなおす』


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 ノンフィクション。

 一部ではあるが、健常者社会に対して激しい闘いをしかける障害者がいる。この本を読む前のぼくは「そんなことしたらみんなから嫌われるだけじゃん。喧嘩をふっかけるんじゃなくて、友好的な関係を築かないと障害者の権利は拡がらないよ」とおもっていた。

 だがこの本を読んで、そうした考えは浅はかなものだと気づかされた。ときに差別されている側から(無意識に)差別している側に闘争をしかけないと差別は是正されないのだ。黒人奴隷が「白人から愛される存在」を目指していたら、いつまでたっても奴隷制はなくならなかっただろう。差別是正のいちばんの敵は、ぼくのような高いところから「お互い仲良くやりましょうや」と言う人間だったのだ。


奥田 英朗
『沈黙の町で』


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 小説。

 いじめをテーマにした小説はいくつも読んだことがあるが、『沈黙の町で』は今までに読んだどの小説よりもリアルに学生のいじめを描いていた。

 いじめの被害者は、小ずるく、自分より弱いものに対しては攻撃的で、平気で他人を傷つける言葉を口にし、他人を裏切る卑怯者で、すぐに嘘をつく少年。またいじめっ子グループにつきまとわれていたのではなく、むしろ逆に自分からいじめっ子グループについてまわっていた。逆に加害者とされるのは、人よりも正義感の強い少年である。

 それでも、いじめられていた子が命を落とせば「イノセントないじめられっ子」「悪いいじめっ子」という単純な構図に落としこまれてしまう。そして我々は「自分とは関係のない凶悪なやつがいじめをするのだ」と安心して目を閉じるのだ。


藤岡 拓太郎
『夏が止まらない』


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 二コマ~数コマのショートギャグ漫画。

 タイトルがおもしろくて、一コマ目がもっとおもしろくて、二コマ目でさらにおもしろいという、二コマ漫画なのに三段跳びみたいな作品もある。「適当に捕まえたおばさんに、自販機の飲み物をおごるのが趣味のおっさん」とか「仲直りをしたらしい小学生をたまたま見かけて、適当なことを言うおっさん」とか、タイトルだけでもおもしろいのに漫画はもっとおもしろい。

 二コマ漫画界の巨匠と呼んでいい。


永 六輔
『無名人名語録』


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 『無名人名語録』『普通人名語録』『一般人名語録』の三部作どれもおもしろかった。

 市井の人々(タクシードライバーとか飲み屋にいるおっちゃんとか定食屋のおばちゃんとかホームレスとか)がなにげなく言った一言を集めた本。SNSで交わされる言葉ともちょっとちがう。もっとプライベートな発言だ。これがしみじみ含蓄がある。

 ただ言葉を載せるだけで、余計な解説を挟んだりしていないところもいい。


 来年もおもしろい本に出会えますように……。


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