最強新コンビ決定戦
THEゴールデンコンビ
(Amazon Prime)
(勝敗に関するネタバレを含みます。ネタの内容についてはなるべく具体的に書かないようにしています)
永野 & ダイアン・津田
千鳥からは「前説」といじられていたが、ほんとに前説のような日陰仕事を引き受けてくれたコンビ。
誰もが嫌だったであろう初戦敗退を(意図してかどうかはわからないが)引き受けてくれた功績は大きい。このコンビ以外が初戦敗退だったら「もう終わりなんて」「かわいそう」と悪い雰囲気になっていたかもしれないが、彼らのキャラ、さらにとても万人受けを狙ったとはおもえないコントをパワフルに披露してくれたことで、ちっとも「かわいそうに」という空気にならなかった。
その後も徹底して敗者として振る舞うことで番組を大いに盛り上げてくれた。このコンビの敗退前とその後で、明らかに会場の緊張感がちがった。
ハライチ・澤部 & スリムクラブ・真栄田
ナイトスクープの非関西出身探偵同士のコンビ。
いちばん相性が良くなかったコンビは実はここなんじゃないかとおもう。というのも、澤部さんが完全に自分を殺して真栄田さんに合わせていたから。澤部さんはほとんど状況説明しかしないまま終わってしまった。
真栄田さんのボケは一見奇抜ではあるがさほどわかりづらいものではなく、ボケ単体でも十分完結してしまう(だからスリムクラブのネタはほとんどツッコミがない)。澤部さんの場を明るくする唯一無二のツッコミを活かせる場がなかった。
ホリケンさんやランジャタイ国崎さんのような天衣無縫かつ周囲を巻き込む系のボケと組んでいたらもっと力を発揮できたのではないだろうか。追いつめられる澤部さんが見たかった。
数は少ないが一発一発のパンチが重たい真栄田さんのボケは十分発揮されていて、ぼくがシリーズ通していちばん笑ったのは「アメリカは負けない!」だった。
ただコクの強い世界観は好き嫌いも激しく、「落としたいコンビを一組選ぶ」という審査方法とは相性が悪かった。
ラランド・サーヤ & しずる・KAƵMA
どんなことをしてくるんだろうともっとも期待させてくれたのがこのコンビだった。芸歴も大きく離れているし共演しているイメージもぜんぜんない。ライブで仲良くやってるコンビじゃなくて、こういうスペシャルなコンビこそ見たいんだよな。
セクシー医者や遠距離恋愛など唯一の男女コンビであることをうまく使ったネタをしていたので、もっと長く見たかった(ただセクシー医者はラランドの家庭教師ネタのほぼ焼き直しだよね)。
楽屋コントはくじ運が悪かった。生真面目で努力家イメージの那須川天心さんはコントの題材には向いていなさすぎる。いじってもおもしろくならないもん。
このコンビが船越英一郎パートでどんな芝居をしていたのか、少なくともそこまでは見たかったなあ。
霜降り明星・せいや & ハナコ・秋山
近場で安易に組んじゃったなあという印象のコンビその1。ふだん組まない二人が組むところが見たいんだよ。
そして、ハナコから選ぶなら岡部さんじゃないの? ともおもった。作家として秋山さんは一流でも、プレイヤーとしての華やかさや味わいは圧倒的に岡部さんのほうが上だろう。
秋山さんはどうしても真面目な印象が強すぎて、追い詰められるとかわいそうに見えちゃうんだよね。ネタでは勝てたが大喜利パートで敗退したのも必然だったかもしれない。
せいやさんの強気なチャレンジ精神は見事。果敢に攻める姿勢は大会ナンバーワンだったかもしれない。得意のモノマネは諸刃の剣で、確実にある程度の笑いをとれる一方、困ったときのモノマネ頼りになってしまっている面もあったかな。
チョコレートプラネット・長田 & シソンヌ・じろう
近場で安易に組んじゃったコンビその2。仲の良さが悪いほうに転がっていた場面もちらほら。コンビ感の緊張感がなかった。
長田さんの能力が高くていろいろできちゃうことで、かえってじろうさんの魅力を殺してしまっていたような気もする。ツッコミに徹する相方の前で自由に暴れまわるじろうさんを見たかったな。シソンヌのコントで見られる狂気的なふるまいがあまり見られなかった。
ネプチューン・堀内 & ニューヨーク・屋敷
今大会の最大の功労コンビと言っていいかもしれない。序盤まったく噛み合わず、屋敷さんが早々にコントから降りてバラエティ番組の立ち居振る舞いをはじめたときは「これはそろそろ落ちるな」とおもったものだが、薄氷の勝利を積み重ね、あれよあれよという間に決勝進出。終わってみればもっとも深い絆で結ばれたコンビとなっていた。
永野&津田コンビが敗退したことで実力者ばかりの真剣勝負の場になってしまいそうになったところを、きちんとバラエティ番組として楽しい空気にしてくれた功績は多大。スベってもそれもまたおもしろい、という空気に持っていったのは強い。
問題児のホリケンさんとそれに手を焼かされる屋敷さんという構図だった序盤だったが、ゲストを迎えたあたりからホリケンさんが力を発揮しはじめる。不条理ボケ攻撃の矛先がゲストに向かったことで屋敷さんがのびのびやれるようになったのも大きい。
一方、生徒手帳大喜利ではフリに苦しめられる屋敷さんを救うかのようにホリケンさんが無類の大喜利力を発揮。チームの問題児だった桜木花道が湘北の救世主となるシーンを彷彿とさせた。そして披露宴で再び生徒手帳大喜利に対峙し、見事リベンジ達成。あそこはシーズン屈指の名シーンだった。
終幕後の「もう出たくないですけどホリケンさんとだったら出たいです」は感動的だった。
男性ブランコ・平井&ロングコートダディ・堂前
細身センスメガネ同士のコンビ。特に、ボケ、ツッコミ、ギャグ、芝居、何でもハイレベルにこなす堂前さんのポテンシャルの高さが光った。どんな状況でも不気味な落ち着きを崩さない舞台度胸は一級品。一度もスベってないのでは?
メガネや自分自身のルックスをうまく使ったり、前のボケにかぶせたり、硬軟織り交ぜたテクニックで危なげなく決勝まで勝ち進んだ。
最も失点が少なかったコンビだったが、やや爆発力には欠け、決勝の「おもしろかった一組を選ぶルール」の前にあと一歩及ばず。そういやロングコートダディはM-1でもキングオブコントでも準優勝、男性ブランコもキングオブコント準優勝だった。ついでに座王でも堂前さんは笑い飯・西田さんに次ぐ2番目の100勝達成者。シルバーコレクター同士のコンビらしい結果になったね。
令和ロマン・くるま&マヂカルラブリー・野田
そしてチャンピオン同士のコンビがこの大会でも優勝。持って生まれた星なのか。
ときには空振りもする危なっかしさもあったが(さすが唯一M-1で優勝と最下位の両方を経験しているマヂカルラブリー)、SASUKEや片岡鶴太郎などしっかり大きな笑いを生み出していた。
しかし鶴太郎さんを引いたのはさすがはチャンピオンというべきか。運にも恵まれてる。鶴太郎さん自体がおもしろすぎるもんな。叩かれてちょっとムッとしてたのも最高。叩かれるのがザ・たっちじゃおもしろくないもんなあ。
このふたり、もちろん発想もいいんだけど、どちらも身体の使い方がうまいんだよなあ。ちゃんと身体で演技ができている。
そして決勝戦で見せた怪演。ぼくは『ガラスの仮面』のふたりの王女オーディション編で北島マヤが見せた天才っぷりをおもいだしたぜ。共演者の動きを覚え、時に真似をし、ときに追い越す。この子、本物だわっ……!
一日での収録だったらしいので、決勝の頃には観客もかなり疲れていたはず。その時間帯にちょうど刺さるバカバカしさと、それを支える確かな基礎能力。納得の優勝。一度は敗れたものの敗者復活からの優勝って、とことん出来すぎてる。勝負の神に愛されたゴールデンコンビでした。
いやー、いいコンテンツでした。観客審査にしたのもよかった。『ドキュメンタル』は「いかに過激なことをするか勝負」みたいになって毎回下品な展開になるけど、観客審査だとちゃんと節度が保たれる。
そして千鳥の処理がうまいので、スベった人もそれはそれでおもしろくなる。いい意味で競技性が失われて、笑いやすい雰囲気になっていた。
バラエティ寄りだったとはいえ、だからこそ選考はフラットであってほしい。つまらなかったコンビを選ぶ方式だと、目立たないほうが有利になってしまう。特に大喜利ステージは出番の量がけっこう違ったし。おもしろかったコンビに2点、つまらなかったコンビに-1点を入れて得失点差で決める、とかだと前に出るコンビが評価されやすくなりそう。
ステージについては、転校生ステージと披露宴ステージがいらなかったかな。ほとんど個人戦でコンビの良さはぜんぜん出てなかったし。設定も粗すぎる(なんで転校生が全員の名前を把握していてあんなに強気で攻めてくるの?)。追い詰められて苦し紛れにむちゃくちゃやっている姿を笑う、って古いよね。知恵のない企画だ。 5分でもいいから考えて打ち合わせをする時間を与えてやればチームプレーも増えてぐっとおもしろくなっただろうに。他のステージの設定が良かっただけに残念。
それ以外のゲストは役者魂や芸人根性を見せてくれて、ただの彩りで終わっていなかったのがすごい。研ナオコさんと鶴太郎さんはさすがコント慣れしているだけあって、受けの芝居をしながらもその場の誰よりも笑いをとっていてかっこよかった。
これはこれで十分おもしろいんだけど、欲を言えば、ちょっと裏側も見てみたい。スタンバイ中の様子を。本編とは別に、メイキング映像も公開してほしいなあ。
そしてどうしても考えてしまうのは、もしシーズン2があるなら誰に出てほしいかということ。いろいろ候補の芸人を考えてみたんだけど、誰が出てもロバート・秋山さんに勝てる気がしないんだよなあ。相方が誰であっても圧勝しそうな気がする。
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