2023年1月24日火曜日

子どもと仲良くなるコツは「なめられる」ことである

このエントリーをはてなブックマークに追加

 何度か書いているが、ぼくは子どもと遊ぶのがうまい。

 まず、子どもと遊ぶことが苦にならない。父や伯父が子どもとよく遊んでくれる人だったので、大人の男たるもの子どもと遊べるようになって一人前、みたいな感覚を持っている。親になって「世間の大人は子どもと遊ぶことがあんまり好きじゃない」ことを知ったぐらいだ。

 何時間でも子どもと遊べる。きっと精神年齢が低いのだろう。子どもと対等に遊べる。かくれんぼも大縄跳びもけいどろも、わりと楽しく遊べる。「えらいですね」なんて言われるが、べつにえらくない。いっしょになって楽しく遊んでいるだけだ。

 よく会う子どもだけでなく、初対面の子どもと遊ぶのもうまい。たいていの子は三十分もすればぼくと全力で遊ぶようになる。さいしょはもじもじしていた子も、二時間もすればぼくのお尻を叩いてきたりする。


 子どもと仲良くなるコツは「なめられる」ことである。

 たいていの大人は、鷹揚な態度で子どもに接する。子どもが失礼なことをしても笑って許してやり、子どもの失敗をどっしりと受け止め、子どものご機嫌を伺い、常に優しくする。

 これは優しいようで、じつは相手を見下している。相手を下に見ているからこそ許すのだ。

 だってそうでしょう。友だちが自分の家のトイレに行って「まにあわなかった~」と言いながら床をおしっこでびしょびしょにして拭かずに出てきたらめちゃくちゃ怒るでしょ? でも二歳児が同じことをしたら、内心では「なにやってくれてんだよ」とはおもうけど「しょうがないね。次はもっと早く行こうね」なんて言って許すよね。本気で「おまえ何やってんだよふざけんなよ!」と怒鳴らない。いい大人は。

 寛容であるというのは、相手を見下しているからこそできることだ。若くて金のない若者が「飯おごってくださいよ~」と言ってきたらおごってやる余裕がある人でも、自分と同い年で自分よりモテて自分より幸せそうで自分より年収の高い人が「飯おごってくださいよ~」と言ってきたらむっとする。それは相手を下に見ていないからだ。自分と同等以上の人には寛容になれない。

 この「寛容=見下している」態度は、相手が子どもであってもちゃあんと伝わる。三歳ぐらいになると察する。この大人は優しくしてくれる。ということは自分より上の立場の存在だ、と。

 相手から、上の立場だとおもわれたらもう仲良くなんてなれない。社長から「今日は無礼講だから言いたいこと言っていいぞ」と言われても「正直、こんな安い飲み会じゃなくて早く帰らせてもらえて給料上げてくれるほうが百倍うれしいんですけど」とは言えないのと同じだ。


 ということで、子どもと仲良くなるために必要なのは「なめられる」こと、言い換えれば上に立たないことだ。

 まずは子どもにお願い事をする。「そこのお茶とって」とか「○○教えて」とか。お願い事をする局面においては、頼む側の立場が下で頼まれる側が上だ。子どもでもわかる。これにより自分の立場を下げる。

 それから、子どもに優しくしない。お願いをされても「いやだね」と断る。ゲームをするときは子ども相手にしっかり勝つ。さらに自慢する。子どもがミスをしたら「やーい、失敗してやんのー」などと言う。

 要するに「大人げないふるまいをする」ということだ。頼みをなんでも聞いてやるとか、わざと負けてやるとか、なにをされても「大丈夫だよ」と笑って許してやるとか、そういう「大人なふるまい」をしない。「ちょっといじわるなライバル」としてふるまう。「ほーらおじさんはこんなにうまくできたよ。すごいでしょ。君にはできないでしょ」なんて大人げない言葉を口にする。

 こうなると子どもも目の色が変わる。眼の前にいるのはいつでも優しくしてくれる大人ではない。にっくきライバルである。本気で対峙しなくては勝てない。


 その上で、うまく手を抜いて負けてやるのだ。

 そうすると子どもは「この大人はわざと勝たせてくれたのだ」とはおもわない。なにしろ相手は優しい大人ではなく、いじわるなライバルだ。「本気で自分を負かそうとしてくるにっくきライバルを自分の力で打ち破ったのだ」とおもう。本気で喜ぶ。

 負けたら悔しがる。そうしないと、勝たせてやったことがばれてしまう。悔しがり、次は勝つ。そしておおげさに喜ぶ。相手を悔しがらせる。

 ただ六歳ぐらいになると、うまくやってもわざと負けていることを見抜かれてしまう。そんなときはハンデを与える。その上で全力を尽くす。それなら、手を抜くことなく、負けてやることができる。勝ったときは相手を悔しがらせることができる。


「子どもといっぱい遊んでくれる優しいおとうさんですね」なんて言われるが、じっさいはまったくの逆だ。まったく優しくない。いじわるなおじさんだ。だからこそ遊べるのだ。


【関連記事】

【エッセイ】ハートフルエッセイ ~子どもの手なずけかた~

四人のおとうちゃん


このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿