2022年5月12日木曜日

死に向かう生き物

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 公園で三歳の次女と遊んでいたら、次女の保育園の友だち・Tくんに会った。

 次女が補助輪つきの自転車に乗っていたので、「後ろ乗る?」と誘ってTくんを荷台に乗せてやる。転ぶといけないので、ぼくが自転車を持ったままついていく。
 なにしろぼくは三十数年前、姉の運転する自転車に二人乗りして転んで左腕の骨を折ったことがあるのだ。自転車二人乗りのおそろしさはよく知っている。

 Tくんを後ろに乗せて次女が運転したり(といってもぼくがずっと支えているのだけれど)、交代してTくんが前に座って次女を後ろに乗せたり。
 二十分ほど遊んだろうか。次女は「かくれんぼしよう」と言って自転車から降りた。ところがTくんはまだまだ自転車に乗りたかったらしい。勝手に次女の自転車にまたがる。


 やめてほしい。
 べつに自転車を貸すことはいいのだが、こけてケガでもされたら困る。なにしろTくんはペダルも満足にこげないし、ハンドル操作もあぶなっかしい。バランスをくずしたときに立て直す力もない(ぼくが支えてやらねば転んでいた、ということが何度かあった)。

「あっちであそぼっか」「かくれんぼしよ」と誘っても、Tくんはかたくなに自転車に乗ろうとする。すべり台に連れていっても、ちょっと目を離すとすぐに自転車に手をかけてまたがろうとしている。おまけに「あっちにいく!」と、下り坂を指さす。

 おいおいおい。ハンドル操作もできず、もちろんブレーキもかけられない三歳児が自転車で下り坂につっこんだらどうなるか。火を見るより明らかだ。なのに彼は果敢にチャレンジしようとする。どこからくるんだ、その自信は。




 男女平等だなんだといっても、生まれもった性差というのは確実にある。「死に向かう子」は圧倒的に男の子のほうが多い。

 高いところには登ってみる、登った後は飛び降りてみる、よくわからないものは触ってみる、よくわからない場所には入ってみる。もちろん個体差もあるが、総じて男子の生態だ。

 ぼくもそうだった。大きなけがはあまりしなかったが、崖やため池や川や立ち入り禁止の屋上など、一歩間違えれば命を落としかねない場所でよく遊んでいたから、今生きているのは単に運が良かったからだ。


 その点、うちの娘はふたりとも慎重すぎるぐらい慎重だ。目を離しても親から離れない。ずっとついてくる。二十センチぐらいの段差でも飛び降りない。「て!」と言って手をつなぐことを要求する。こっちが「ジャンプしてみ」と言っても首を横に振る。危険なことには一切手を出さない。

 そんな慎重女子に慣れているので、たまに男の子と遊ぶとその大胆さがおそろしくなる。ちょっと目を離すと高いところに上ってたりするんだもの。

 こないだも、坂道の上にスケボーを置いてその上に腹ばいになっている男子小学生を見つけて、ぜんぜん知らない子だったけどおもわず「やめときや」と注意した。スケボーに乗って頭から坂道を降りていったら99%ケガする。残りの1%は死だ。
 でも男子はわからないんだよなあ。ぼくも似たようなことやってたからよくわかる。


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