ドラえもんの映画『のび太の宇宙小戦争』に「天才ヘルメット」と「技術手袋」という道具が出てくる。
ヘルメットがラジコンの改造内容を考えてくれて、手袋が勝手に手を動かしてくれる、というものだ。
この道具の説明を聞いたとき、ぼくは「人間いらんやん」とおもった。
思考も動作も道具がやってくれるのなら人間が装着する必要などない。
……だがじっくり考えるうちに、ふと人間が装着する理由に思い至った。
そうか、あの道具は人間を動力源としているのだ。だから人間が装着しないといけないのだ。人間のエネルギーを借用することで「天才ヘルメット」は考え、「技術手袋」は動くことができるのだ。
つまり、あのヘルメットと手袋をつけている間、人間はエネルギーを供給するだけの「電池」に過ぎないのだ。
『のび太の宇宙小戦争』には、スネ夫が「天才ヘルメット」と「技術手袋」をつけて夜遅くまでがんばって戦闘機を改造するシーンが出てくる。
映画を観ているときは「思考も実行も道具がやってくれるのに、何をがんばってる感じ出しとんねん」とおもっていたが、その考えは浅はかだった。じっさいスネ夫はがんばっていたのだ。なにしろ道具にエネルギーを吸い取られるのだ。きっとひどく疲れるだろう。
コンピュータが日常のものになり、AIの精度もどんどん上がっている。「このままだとAIに仕事をとられて、人間の仕事はなくなるぞ!」なんて言う人もいる。
その予想は見事に当たっている。22世紀では、人間は頭脳労働も肉体労働もとられ、人間は電池としての仕事しかさせてもらえないのだ。
「天才ヘルメット」と「技術手袋」は、人間が電池になる未来を示唆している道具なのだ。
……という話を友人にしたところ、「映画『マトリックス』がそんな話だよ」と言われた。
ぼくは観たことがなかったので「グラサン男がエビ反りをするだけの映画」の認識だったのだが、「仮想現実の中で生きながらコンピュータの動力源として培養されるだけの存在である人間を解放するために、キアヌ・リーヴスが戦う物語」なんだそうだ。
がんばれキアヌ・リーヴス! コンピュータに支配されたスネ夫少年を助け出すために!
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