2020年11月17日火曜日

【読書感想文】池上彰のダメ番組のような / 中原 英臣・佐川 峻『数字のウソを見破る』

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数字のウソを見破る

中原 英臣  佐川 峻

内容(e-honより)
私たちの身の周りにはさまざまな数字が溢れている。健康診断の正常値や失業率・有効求人倍率、テレビの視聴率など、個人にとっても社会にとっても、数字は大きな力を持っている。しかし、客観的でウソがないように見えるそれらの数字には、そのまま信じると騙されるものもしばしばある。例えば、テレビの視聴率の〇.一%の違いで広告会社は動くが、サンプル調査ゆえの誤差の範囲でまったく意味はない。医療・健康・経済・社会に関するいろいろな数字を取りあげて、そのウラを暴く。

 共著だが、二人が共同して執筆しているわけではなく、前半は医師である中原氏が医療分野について書いて、後半は科学評論家である佐川氏が経済や社会の諸々について語っている。
 ボリュームが足りないので二人の本をむりやりまとめて合本にした、という感じの作り。

 そして前半の中原氏のパートはいまいちだった。
「日本では〇〇という基準で医療をやっているが、欧米では□□という基準が使われている。だから〇〇は適切でない!」
みたいな論調なのだが、正直素人にはそれだけ読んでも〇〇と□□のどちらが正しいのかわからない。日本の基準のほうが正しくて欧米のほうがまちがってるのかもしれないし。

「厚労省が出した数字をそのまま信じるな」というのは首肯できるが、だったら中原氏の出した数字だってそのまま信じられない。
 結局この本を読んだだけだと「厚労省は〇〇と言っているが、反対意見もある」ということしかわからないんだよね。

 医療に関しては万人に通用する正解がない以上、ちょっと疑わしい数字でも「数字のウソ」とまでは言い切れないんじゃないかな。




 佐川さんのパートはおもしろかった。内容は古かったけど(2009年刊行なのでしかたないけど)。

 気象庁の天気予報が雨を降るかどうか的中させる確率は約85%だそうだ。
 85%と聞くとけっこう当たってるなという気がするが、2008年に東京で雨が降ったのは114 日だけ。

 この数字は、東京では、日に関係なく、いつも「明日は晴れです」と「予報」すれば68.8%、すなわち約70%の適中率になることを意味している。
 雨が降る日数というのは、年によっても、地域によっても異なるだろうが、おそらく日本ではところかまわず、「明日は晴れ」と予報しておけば、だいたい7割前後の適中率が得られる。
 ほとんど雨が降らない、たとえばアフリカの砂漠地域での「予報」を考えれば、もっと高い適中率が得られるのは容易に想像できるだろう。極端な例だが、乾燥した地方で、年間に2~3日しか雨が降らないとすれば、「明日は晴れです」という予報の適中率は99%を上回ることになる。
 ここでいいたいことは、日本で85%という数値を評価するときの基準は0%ではなく、70%からどれだけ高いか、ということだということである。それが本当の意味での予報の適中率の評価になる。70%の適中率は素人にも実現できるのだから。
 とすれば、気象庁の予報の適中率は、70%から15ポイントだけ高いということになる。気象衛星からの生のデータや蓄積した膨大な気象データをスーパーコンピューターで計算した結果の予報として、はたしてこの数字は大きなものだろうか。評価の仕方にもよるが、非常に大きいとはいえそうにもないような気がするが、どうだろうか。

 堀井憲一郎さんが『かつて誰も調べなかった100の謎』という本で、天気予報が当たってるかどうかを検証していた。
 その調査によると、雨が降った31日のうち、7日前に「7日後は雨」と的中させていたのはたったの1回だけだったそうだ。的中率は驚きの3.2%。ゲタを転がすよりはるかに的中率が低い。

 そして今でもほとんど天気予報の的中率は上がってないらしい。週間天気予報は基本的に当たらないのだ。
 そしてこの先も週間天気予報の成績が向上する可能性はほとんどない。どれだけコンピュータが進化しても、天気のような複雑なものを正確に予測するのはできないらしい(カオス理論)。
 だから「週末の天気は?」と訊かれたときは天気予報など見ずに「晴れるよ」と言っておけばいい。2/3以上は当たるから。




 そのほか、地球温暖化、株のナンピン買い、失業率、出生率、平均寿命など雑多な話。
 それぞれ興味深いんだけど、いかんせんテーマが多岐にわたりすぎているのですごく浅い。
「食品が製造年月日表記から賞味期限表記になったのは外国からの圧力によるもの」とかテレビ番組で紹介するぐらいならおもしろい内容だけど、本で読むにはものたりない。
 根拠とか洞察とかがほとんどないんだよな……。最近の池上彰さんの番組みたい。


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