ベーシックインカム
井上 真偽
ミステリ+SF短篇集。この趣向はおもしろい。
ミステリ的な仕掛けがあり、さらにその後もうひとつSF的な仕掛けが待ち受けている。二段階の裏切り。
人工知能、遺伝子工学、仮想現実、人間強化など、ちょっと先の技術をうまく活かしている。
この人の小説を読むのは二作目。
前に読んだ『探偵が早すぎる』は、個人的には好きなミステリじゃなかった。
ノリがギャグ漫画みたいで。登場人物もトリックもストーリー展開もすべて嘘くさいし、かといってそれが笑いにつながるほどのユーモアもない。ひとことでいうなら「すべってる」状態だった。
試みはおもしろかったんだけどね。
『ベーシックインカム』のほうは、試みのおもしろさはそのまんまで、不自然さが薄れていた。
こっちもかなり無理はあるんだけど、テーマがSFだから無理が効くんだよね。「そういう世界だから」で済ませられる。
『探偵が早すぎる』の感想で「この人の本はしばらく読まない」って書いたけど、この路線だったらまた読みたいな。
SF+ミステリといえば、西澤保彦氏が有名で、タイムリープや瞬間移動などを使ったミステリを書いている。
しかし西澤作品はギャグ漫画的なんだけど、『ベーシックインカム』のほうはより本格SFに近い。ミステリ要素がなくても成立するぐらい。
ちなみに表題作『ベーシックインカム』はあんまりベーシックインカムと関係ありませんでした。
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