恋のゴンドラ
東野 圭吾
東野圭吾作品で「衝撃の愛憎劇」なんて書いてあるから、てっきり殺人事件に発展するのかとおもったらそんなことはなかった。
基本的にはラブコメだ。でも人によってはサスペンスとおもうかもしれない。
あらすじに書いてある通り、浮気がばれそうになる男の話だ。
シチュエーションコメディとしてはおもしろいけど、この「浮気がばれるかばれないか」で一冊引っ張るのは無理があるのではないかとおもっていたら、この話はあっさり終わってしまう。短篇集だったのだ。
とはいえ連作短篇集で、ここの短篇はそれぞれリンクしている。ある短篇の脇役が次の話の主人公になる……という感じ。
このへんの構成はすごくうまい。
まあリアリティはないんだけど。偶然が続きすぎて、どんだけ世間狭いねんって感じで。
とはいえ、求められるリアリティなんてテーマによってずいぶん変わってくるとおもうんだよね。
『恋のゴンドラ』みたいなポップなラブコメの場合、そこまでリアリティを追求しなくていいとおもう。
本格ミステリでこれだったら怒るけどね。
しかし『夜明けの街で』を読んだときもおもったけど、東野圭吾さんはダメな男に甘いよね。ダメな男というか、クズな男というか。浮気をしちゃう男に対する処遇が甘い。
浮気をした男はそれなりにしっぺ返しを食らうけど、それがすごく軽い。
こっぴどく怒られて終わり、ぐらいなのだ。それでクズ男を許してしまう。
女性作家だったらもっとひどい目に遭わすとおもうんじゃないかな。尻の毛までむしりとるぐらいにさ。
登場人物への処遇の方法に、作者の恋愛観が表れるような気がするな。
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東野圭吾って、自著のあとがきに「友達は痴漢が趣味で自分と一緒にいてもやる」と、散歩に行ったら猫がいた~くらいのカジュアルさで書いてたことがあります。ダメ男どころか犯罪者にすらこれです。
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