2023年3月28日火曜日

本人が言うんだからまちがいない

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「本人が言うんだからまちがいない」について。


 たとえば小説家Aの作品について、読者や評論家が議論を交わしている。これは○○を暗喩している、いやこれは××のモチーフだ、と。

 そこへ、当の作者A本人がやってきて言う。
「いやこれは△△だ。本人が言うんだからまちがいない!」


 すると、他の人たちは黙らざるをえない。誰よりもよく知ってる作者本人が言ってるんだからまちがいないよね、と。

 だが、はたしてそうだろうか。

「本人が言うんだからまちがいない」はまちがいないのだろうか。


 ぼくはそうはおもわない。むしろ、本人ほど信用ならないものはない。

 作者本人は、自分にとって都合のよい証言をするに決まってる。

「それはなーんも考えずに書いたんだよね。そしたら評論家たちが勝手に深い意味を見いだしてくれたの」

「ここの箇所は、電車の中でたまたま耳にした話をそのまま書いたの。要はパクリ」

なんてことは言わないだろう。


 言ってみれば作者なんてのはいちばんの利害関係者だ。その証言はまったくあてにならない。

 死体が見つかった。その部屋には死体と、Xという人物だけがいた。もちろんXは最有力容疑者だ。

 そのXが「おれは殺したが正当防衛だった。証拠もなければ目撃者もいないが、殺した本人が言うんだからまちがいない」と言った場合、それをそのまま信じますか?


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