エレベーターに早く来てほしくて、ボタンをふたつとも(ふつうの呼び出しボタンと車椅子用エレベーター用呼び出しボタン)押すやつがいる。早く現世から退場してほしい。
彼ら彼女らが愚かなのは、「自分さえよければ他人はどうでもいい」やつだからではない(それもあるが)。「他人はもちろん、自分も損しているのにそれに気づいていないから」だ。
エレベーターのボタンを両方押すと、かえって遅くなる。
たとえばエレベーターが2機あるとする。1機は小さめのエレベーター(A)、もう1機は車椅子用エレベーター(B)とする。ともに1階に停止している。
10階から1階に行きたい人が[↓]のボタンを押す。するとエレベーター(A)が上昇をはじめる。
数秒遅れて5階の人が[↓]のボタンを押す。エレベーター(B)が上昇をはじめる。
他にボタンを押す人がいなければ、エレベーター(A)もエレベーター(B)も1階から呼び出された階まで上昇し、人を乗せ、止まることなく1階に到着する。どちらも必要最低限の時間で1階に到着する。
一方、10階から1階に行きたい人の思考能力が欠如しており、[↓]のボタンを押し、さらに車椅子用エレベーター呼び出しボタンも押した場合を考える。
この場合、エレベーター(A)が上昇をはじめ、10階に向かう。少し遅れてエレベーター(B)も10階に向かう。
5階の人も[↓]のボタンを押すが、エレベーターは2機とも5階を通過して10階に向かう。なぜなら両機とも「10階から先に呼び出された」という指示を優先するから。
10階でボタンをふたつとも押した阿呆は、先に到着したエレベーター(A)に乗る。当然ながら、エレベーターが到着する時間はボタンをひとつだけ押したときと変わらない。
少し遅れてエレベーター(B)も10階に到着するが、誰も乗る人がいないのでそのまま無駄に待機する。
エレベーター(A)は阿呆を乗せて下に降りる。そして5階で止まる。5階で呼び出した人を乗せるため。
つまり、阿呆がボタンをふたつとも押すことで、
・5階の人は、本来スムーズに来たはずのエレベーター(B)に一度素通りされるので損
・10階の阿呆は、本来ノンストップで1階まで降りられたはずなのに、途中で5階に止まるので損
・エレベーターは両方とも10階に向かうことになり、無駄にエネルギーを消費
と、三方一両損なのだ。
ボタンを全部押す阿呆は思考能力が欠如しているので「全部押せば早くなる。少なくとも遅くはならない」と信じているかもしれないが(すべてのエレベーターが独立して動いているのであればその通りだが、そんなエレベーターはほぼないだろう)実際は「全部押しても早くはならない。状況によっては遅くなる」のだ。
自分自身も損をすることに気づかず、今日も阿呆はエレベーターのボタンを全部押す。
ということで、エレベーターのボタンを全部押すやつはきっちり捕まえて、1時間の違反者講習を受けさせることにしようぜ!