2026年7月31日金曜日

【読書感想文】森川 すいめい『感じるオープンダイアローグ』 / じっくり相手の話を聞くのはむずかしい

感じるオープンダイアローグ

森川 すいめい

内容(e-honより)
オープンダイアローグ発祥の国フィンランドでは、対話によって、精神面に困難を抱えた人の8割が回復。学校や職場、家庭、議会でも「対話の場」が開かれ、大きな効果を上げている。日本人医師として初めて、オープンダイアローグの国際トレーナー資格を得た一人である著者が、自らの壮絶な過去とオープンダイアローグに出会った必然、そして、フィンランドで受けたトレーニングの様子をつぶさに記した、オープンダイアローグをハートで感じる書!

 オープンダイアローグとは、精神医療の手法で、当事者や家族や支援者が集まって「対話」を重ねることで問題解決や心の平安を目指すという手法だそうだ。

 ぼくは幸いにして今のところ特に悩みも抱えていないし、悩みを抱えている人を支援するような立場にもないけど、良書だという噂を耳にして手に取ってみた。いつ困窮するかわからないしね。



 精神科の診療といえば患者と医師の一対一、あるいは横に看護師がいるけど聞いているだけ、みたいなパターンが多いのではなかろうか(あんまり知らないけど)。

 ただオープンダイアローグでは、患者の家族とか、医師以外の病院スタッフとか、場合によってはケアワーカーといった人たちも「対話」に参加するそうだ。

 私は、ようやくそのとき、スタッフが2名以上入ることの意味を理解した。ケロプダス病院のスタッフが、
「同じ意見のスタッフだったら、そこにいなくてもいいのです」
 と話すのを聞いてわかった気になっていたが、このとき初めて腑に落ちた。
 それまでの、医師の私が中心になって行う対話は、対話なのか単に輪になっただけなのかわからないものだったが、スタッフと対等の立場で話すようになったら、明瞭に対話が広がった。今では、他のスタッフが入ることで、対話がとれまでと全然違う、豊かなものにことを実感している。私一人の考えではどうにもならないことがしばしばあるし、他のスタッフが話しているのを聞くことで刺激も受けられる。また、話さない時間があることで考える間が生まれ、私自身の中にも新しい考えが浮かびやすくなる。対話の場にいるそれぞれの思いが重なって、新しい考えやこれまで話されていなかったことが話されるようになっていく。

 ふたりっきりで話すとどうしても「質問する人と答える人」みたいな形になってしまうけど、三人、四人になると「その場にはいるけどただ話を聞いているだけ」という人が出てくる。この人は対話に参加していないようで、その間に自分の考えをまとめたり、新しいアイディアを思いついたりする。これが重要なのだという。

 たしかにね。親しい人でないかぎりは一対一で話すのはしんどいけど三人以上だとわりと楽、ってのは自分の体験をふりかえってみてもよくわかる(あんまり多いとそれはそれで疲れるけど)。



 今のぼくにとって最大の関心事は、子どもとの接し方だ。

 うちの長女は中学生。絶賛反抗期なので、こちらが言ったことに対して、喧嘩腰の返事がかえってきたりする。そうするとこちらもムッとしてしまい、言い争いのようになったりする。お互い怒鳴るような物言いになり、当然ながらそうなると建設的な話し合いなどできるはずがない。

「じっくり相手の話を聞く」ことが大事だとはわかっているのだけど、理解しているのと実践できるのはまたちがう。

 最初は、「話し切る」「聞き切る」ための工夫をするとよいかもしれません。家族、たとえば子どもに、まずは話したいと思うことを話し切ってもらう、続いて「次は私が話していい?」などと確認したうえで、今度は母親が話したいことを話し切るというふうに、話す人と聞く人を分けるだけでも対話は促進されるでしょう。
 このとき、たとえばペンとか縫いぐるみとか何かシンボルになるものを使って、それを持っている人だけが話すというルールを作るのは助けになると思います。話を最後まで聞き切ると、今まで思い込んでいたことに間違いや誤解があることを知るきっかけになるでしょう。
 誤解が解消し、理解が進むと、もっと話したくなったり、聞きたくなったりすると思います。
 最初はとても難しいかもしれません。第三者がいなければ対話にならないかもしれません。それでも不可能ではないと思います。

 この「たとえばペンとか縫いぐるみとか何かシンボルになるものを使って、それを持っている人だけが話すというルール」はなかなかいい案かもしれない。特に子どもが小さいときは。

 案外、形で行動を縛るってのは有効だよね。

 たとえばテレビの討論番組を見ていると、出演者がお互いの話をさえぎって持論を展開し、最終的には声のでかいやつ、厚かましいやつがその場を制す……なんてことが起こる。あれだって、マイクが一本だけあって司会者がマイクを回す形にしたらあんな不毛なことも起こらないとおもうのだが。


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