立って説教を食らっているあいだ手持ちぶさただったので、持っていた輪ゴムを小指に巻きつけて遊んでいた。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐると、十重二十重に輪ゴムを巻きつけていると、ゴムが指の肉に食いこんではずれなくなった。
あっやばいと思って輪ゴムをひっぱった。が、圧迫された分、指の先がふくらんでるからぜんぜんとれない。
一応お説教を聴いているふりをして先生の顔を見ながら、指先は必死に輪ゴムと格闘。
やっているうちにどんどん指先の感覚がなくなっていって、これまずいどうしようと思っていたら、隣で一緒に怒られていた子がぼくの様子がおかしいことに気づいて声を上げた。
「うわっ、おまえの指、めちゃくちゃ紫色になってるじゃねえか!」
うわうわやべえよ、これ指腐って落ちちゃうよ、とみんな(先生含む)があわてふためいて、結局、先生が力を入れて引っ張り、やっと輪ゴムはとれた。ぼくの指は奇跡的に落ちなかった。
ああよかったね、あぶないところだったよ、とその場の全員がほっと一息。
あれほど怒っていた先生も、すっかり安心ムードに呑まれてしまい、
「まあ、じゃあ、とにかく気をつけるのよ」
と、なんとなくあやふやな雰囲気で説教は終了し、これといったお咎めはなしだった。
……という経験があるので、もしぼくが被告人席に立つことになったときは、こっそりポッケに輪ゴムをしのばせておいて検事の追及の手を緩める作戦を実行しようと思っています。
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