2019年11月27日水曜日

【映画感想】『アナと雪の女王 2』

『アナと雪の女王 2』

内容(ディズニー公式より)
命がけの妹アナによって、閉ざした心を開き、“触れるものすべてを凍らせてしまう力”をコントロールできるようになったエルサは、雪と氷に覆われたアレンデール王国に温かな陽光を取り戻した。そして再び城門を閉じることはないと約束した。それから3年――。
深い絆で結ばれたアナとエルサの姉妹は、王国を治めながら、失われた少女時代を取り戻すかのように、気の置けない仲間たちと平穏で幸せな日々を送っていた。しかしある日、エルサだけが“不思議な歌声”を聴く。その歌声に導かれ、仲間のクリストフやオラフと共に旅に出たアナとエルサは、エルサの持つ“力”の秘密を解き明かすため、数々の試練に立ち向かう。果たしてなぜ力はエルサだけに与えられたのか。そして姉妹の知られざる過去の“謎”とは? 旅の終わりに、待ち受けるすべての答えとは――。

そうそう、こういうのでいいんだよ。続編って。
ちゃんとエルサはエルサ、アナはアナのままでいてくれてる。

最近ディズニーの続編といえば『シュガー・ラッシュ:オンライン』『トイ・ストーリー 4』と、立て続けに「前作の世界観をぶっ壊す」作品が続いていたので、こういう「ちゃんと前作までのキャラクター造形を尊重する」作品を観てほっとした。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』も『トイ・ストーリー 4』も、「この作品さえおもしろけりゃいいだろ」って感じで作ってんだよね(その狙いすら成功してるかどうか怪しいけど)。
でもこっちは「ディズニー作品」を楽しみに来てるわけ。映画一本だけを楽しめればそれでいいわけじゃない。過去の作品もあわせて楽しむために新作映画を観にいってるの。そういう心情を理解してねえんだろうなあ、『シュガー・ラッシュ:オンライン』『トイ・ストーリー 4』の制作陣は。

あ、いかんいかん。また愚痴が長くなる。

愚痴を読みたい奇特な人は以下からどうぞ。
【映画感想】『トイ・ストーリー 4』
【映画感想】『シュガー・ラッシュ:オンライン』



前作『アナと雪の女王』、ぼくは数年前にDVDで観た。
そのときおもったのは
「たしかにおもしろい。よくできている。でも、社会現象になるぐらいヒットするほどかなあ。他のディズニー作品もこれに負けず劣らずだとおもうけど。どうしてこれだけがそこまでヒットしたんだろう」

『2』を観てその謎が解けた。
映像、そして音楽に圧倒されたのだ。
なるほど。前作が大ヒットしたのもこれが理由か。
これは劇場で観なきゃだめだ。

はっきりいって『2』のストーリーは難解だ。
過去と現在が交錯するし、エルサが何のために行動しているのかもわかりづらい。

行動目的がシンプルだった前作とは対照的だ。
「追われたから山へ逃げて一人で生きていくエルサ」「エルサを追いかけるアナ」「アナの具合が悪くなったのでお城に向かうクリストフたち」「捕らえられたので逃げるエルサ」「氷漬けになったアナを助けようとするエルサ」
と、前作の行動はすごくわかりやすい。
人物の善悪もはっきりしている。

『2』でははっきりと悪人として描かれるのは××××××(ネタバレのため伏字)ぐらい。しかし××××××はもう死んでいる。あとの登場人物はわけもわからず右往左往としているだけだ。
観ているこちらも戸惑う。誰に感情移入していいのやら、何を期待すればいいのやらさっぱりわからない。

だが。
CGによる壮大な映像と迫力ある音楽がそんな疑問をふっとばしてくれる。
観終わった後は「なんだかわからんがすごいものを観た!」と感じる。そう、感じるのだ。

『アナと雪の女王2』がDVD化されたときの評価はあまり高くないのではないかとおもう。
なぜならストーリーが前作に比べて不明瞭だから。こういうのが好きな人もいるだろうけど万人受けはしづらいから。
映像や音楽の迫力はDVDで観ても伝わらないだろうから。
音楽ライブをYouTubeで観るようなもので、富士山を写真で観るようなもので、形は伝わるんだけどその匂いや手触りや温度は伝わらない。

だから興味のある人はDVD化を待たずに劇場に行くことをおすすめします。
そして小難しいことを考えずに迫力に浸ってほしい。

いやーすごかった。映像と音楽が。
ぼくはピクサースタジオを好きなんだけど、ピクサーの映像技術はディズニースタジオに完全に抜かれてしまったな。


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氷漬けになったまま終わる物語


2019年11月26日火曜日

ツイートまとめ 2017年5月


路上睡眠

年齢詐称

幽霊城

図書館

業界用語

餅餅食感

関西人

小熊猫

卓球部

大熊猫小麦餅

五輪問題

交友能力

案内人

磯野家

死亡実験


2019年11月25日月曜日

オトガイ選手の頓着


オトガイです。
ええ、フィギュアスケート選手の。
そうです。いえ、家族とかではなく本人です。

実況やってた藤原さんですよね。
こないだの放送、観ました。
それでですね、藤原さんの実況に関していくつか気になった点があったんで言っておこうとおもいまして。
いえクレームってわけではないんですけどね。


えーと、まず何から言おうかな。これにしようか。

ぼくの紹介シーンで、「前回大会の悔しさをバネに練習に励んでまいりました」って言ってましたよね。
ああいうのやめてもらえますか。
ぼくは前回九位でしたけど、まったく悔しいとはおもっていませんでしたから。
だって九位って自己ベストでしたからね。
勝手に悔しいことにしないでもらえますか。
前回大会の後にお祝いの会の席を設けてくれた後援会の人たちにも失礼ですし。

あと細かいことを言いますけど「励んでまいりました」って謙譲語ですよね。それ他人に対して使うのおかしくないですか。
いや同じ日本人だからとか、そんなの理由にならないでしょ。なんであなたがぼくの代わりにへりくだるんですか。
「励んでいらっしゃいました」でしょうが。


それから演技の直前。
「日の丸を背負って挑みます!」って言ってましたよね。
あれもおかしくないですか。ぼくの衣装の背中にはスポンサーさんであるコメカミ食品さんのロゴが入ってますからね。知ってます? コメカミ食品さんのロゴ。黄色と青のシマシマ。日の丸とは似ても似つかぬデザインですよ。
あっ、比喩? ああ、「日本中の期待を背負って」って意味ですか。
でもね。だとしてもおかしくないですか。
どう考えたって日本中が期待してるのはぼくじゃなくてサクラコウジ選手でしょ。イケメンですもん。世界ランクも彼のほうが上だし。
いやいいんですよ、そんなフォローしなくても。不人気なのは自分がいちばんよくわかってますから。
だいたいあなたたちは番組をあげてサクラコウジ選手を応援してるじゃないですか。
ぼく、測ったんですよ。ぼくの紹介VTRは一分二十四秒。それに対してサクラコウジくんのVTRは四分五十五秒でしたからね。
ただぼく、地元の北葛城郡ではけっこう人気なんですよ。ですから言うのであれば「北葛城郡の郡章である河童のマークを背負って」にしてほしかったですね。
それであれば北葛城郡の後援会の人たちも喜んでくれたでしょうから。


それから「いよいよ総決算」「これまでのスケート人生の集大成」って言ってましたよね。
勝手にぼくの決算期を決めないでくださいよ。あと五年ぐらいは現役にしがみつこうとおもってるんですから。
やめるのかとおもってびっくりするじゃないですか。北葛城郡の後援会のみなさんが。

それから転倒したときに
「ちょっと集中力が途切れたか」
って言ってましたけど、あのときはまあまあ集中してましたよ。エロいこと考えてたのは最初だけですからね!


で、いちばん許せないのは最後の一言です。
「オトガイ選手、今後メンタル面を鍛えればさらに強くなるでしょう」
って言いましたよね。
精神科医でもないのに勝手にぼくの精神鑑定をしないでください!
あんなこと言ったら、まるでぼくが細かいことばかり気にするめんどくさい人間みたいじゃないですか!


2019年11月22日金曜日

ツイートまとめ 2019年1月


一流

自動車

いだてん

組体操



敵味方

生命保険

現実

ネタバレ

バイリンガル

霊長類

自尊心

受信料

気配り

おんぶ

マザコン

寒い理由

排水溝

化学反応

あんたがたどこさ

文学

KISS

寄生虫

無重力

酩酊

官能小説

裏側

所属部屋

スマイルプリキュア

短歌

実感

ギフト

運動

2019年11月20日水曜日

【読書感想文】生産性を下げる方法 / 米国戦略諜報局『サボタージュ・マニュアル』

サボタージュ・マニュアル

諜報活動が照らす組織経営の本質 

米国戦略諜報局(OSS) (著)
越智 啓太(監修・訳) 国重 浩一(訳)

内容(Amazonより)
CIAの前身、OSSが作成した「組織をうまくまわらなくさせる」ためのスパイマニュアル。「トイレットペーパーを補充するな」「鍵穴に木片を詰まらせよ」といった些細な悪戯から、「規則を隅々まで適用せよ」「重要な仕事をするときには会議を開け」まで,数々の戦術を指南。マネジメントの本質を逆説的に学べる、心理学の視点からの解説付き。津田大介氏推薦!

サボタージュマニュアルとは、CIAの前身に当たる米国の諜報機関OSSが作成した、諜報員向けのマニュアル。
第二次世界大戦の敵国の軍事活動や生産性を妨害するためのマニュアル。
マニュアルというとふつうは効率を上げたりミスを減らしたりするためにつくるものだが、このマニュアルは逆。どうやったら効率を下げるか、ミスを減らすか、人々のやる気がなくなるか、という発想で作られている。
当時はまじめにつくったのかもしれないが、ブラックユーモアのようでおもしろい。

といっても、サボタージュマニュアルの大部分は「トイレを詰まらせる方法」とか「燃料タンクに何を入れたら車が故障するか」とかで、悪質ではあるが程度の低いイタズラ、というレベルでどうもくだらない。
そもそも燃料タンクを一人で触れる立場にある人間以外には実行不可能だし。

完全イタズラマニュアル、といった感じ。
これ考えるのは小学生に戻ったようで楽しかっただろうなあ。でも実用性は乏しそう。


だがこのマニュアルの白眉は第11章。
▼11 組織や生産に対する一般的な妨害
(a) 組織と会議
1.何事をするにも「決められた手順」を踏んでしなければならないと主張せよ。迅速な決断をするための簡略した手続きを認めるな。
2. 「演説」せよ。できるだけ頻繁に、延々と話せ。長い逸話や個人的な経験を持ち出して、自分の「論点」を説明せよ。適宜「愛国心」に満ちた話を入れることをためらうな。
3. 可能なところでは、「さらなる調査と検討」のためにすべての事柄を委員会に委ねろ。委員会はできるだけ大人数とせよ(けっして5人以下にしてはならない)。
4. できるだけ頻繁に無関係な問題を持ち出せ。
5. 通信、議事録、決議の細かい言い回しをめぐって議論せよ。
6. 以前の会議で決議されたことを再び持ち出し、その妥当性をめぐる議論を再開せよ。
これは一部だが、この“妨害方法”は七十年以上たった現在でも十分通用する……というか多くの企業や官公庁で実行されているよね。

ぼくが前いた会社でも実行されてた。毎日朝礼して誰かが演説したり、なにかというと「それは会議を開いてみんなの意見を聴こう」と言いだすやつがいたり……。
もしかしたらあの人たちはどっかの諜報機関から送りこまれたスパイだったのかなあ……。そうおもいたい……。



おそらく学校教育のせいでもあるんだろうけど、「みんなで話しあえばよい知見が得られる」という思いこみを持っている人は多い。
たしかに集団の水準より下にいるバカからすると「他の人に考えてもらう」は有効な方策かもしれない(だから自分で考えない人間ほど会議をしたがる)。

しかしたいていの会議はレベルの低い人間に議論がひっぱられるので正しい結論が導きだされないことも多い。
このうち、スペースシャトル「チャレンジャー」は、1986年1月8日に打ち上げの途中で爆発しました。この事故に際しては、打ち上げ当日に気温が非常に低くなることが予測されたので、シャトルの部品を製作している下請け会社の技術者が、危険性を指摘していたのに、「会議」によってその発言が封殺されて、事故が発生してしまったのです。
 また、スペースシャトル「コロンビア」は、2003年2月1日、発射の際に主翼前縁の強化カーボンとカーボン断熱材が損傷したことにより、大気圏再突入時に空中分解してしまいました。この事故では、NASAの技術者のロドニー・ローシャが、打ち上げ時に断熱材が破損した可能性を早くから指摘し、再三にわたって、人工衛星からその部分を高解像度で撮影することや乗組員に直接チェックさせることを要求したのに対して「会議」でその意見が封殺されて、事故が発生したことが後の調査でわかりました。
「可能なところでは、『さらなる調査と検討』のためにすべての事柄を委員会に委ねろ。委員会はできるだけ大人数とせよ(けっして5人以下にしてはならない)」(5章▼11(a)3)、「重要な仕事をするときには会議を開け」(5章▼11(b)11)といったルールがサボタージュになり得るのは、じつはこのような現象が頻繁に生じるからなのです。

まったく同じ能力の人間が、完全に対等な立場で、自由闊達な雰囲気で話しあえば議論も有意義なものになるのだろうが、そんな会議はまずない。

声の大きいやつの意見が通るか、誰も反対しないような無意味な結論(「各自効率性を上げるよう努力する」みたいな)に達するか、後になって「だからおれはあの時反対したじゃないか」と自己弁護するための議論になることがほとんどだ。

もちろん複数人がからむプロジェクトにおいてコミュニケーションは必要不可欠だが、課題解決の手段としては会議はふさわしくない。
「意見のある人間が集まって意見を出し、それを踏まえた上で誰かひとりが方針を決める(もちろん意思決定者と責任をとる人物は同じ)」がいちばんいいやりかたなんだろうなあ。



 さて、このような「学習性無力感」を意図的につくり出すためにはどうすればよいでしょうか。サボタージュ・マニュアルの次の項目を見てください。「非効率的な作業員に心地よくし、不相応な昇進をさせよ。効率的な作業員を冷遇し、その仕事に対して不条理な文句をつけろ」(5章▼11(b)10)。これを行うと、効率的に一生懸命仕事をしている作業員は自分がやっていることがばからしくなるか、何をすればよいのかわからなくなってきます。つまり、学習性無力感が職場につくられてしまい。作業員の士気は大きく損なわれるのです。
これもよく見る光景だね。
無能なイエスマンが引き上げられた結果、現場の人間がどんどん辞めていくやつ。

このへんの「生産性を下げる方法」は共感できてすごくおもしろい。

生産性を下げるマニュアルがあるということは、この逆をやればいいだけなんだけど、ほとんどの組織はそれができないんだよなあ……。やっぱり大企業や省庁には諜報員がまぎれこんでてサボタージュ・マニュアルを実行してんのかな。


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