2015年10月6日火曜日

【エッセイ】ノー残業代デー

会社にパートのデザイナーがいる。エムさん。
細かい依頼でも嫌がらずに受けてくれるし、仕事も早い。おまけに忙しいときには残業も引き受けてくれるので、上司からも評判がよかった。
「エムさんがいてくれて助かるわ」

ところがあるときから
「エムさん早く帰ってな」と追いだすように帰らせるようになった。
エムさんは相変わらずまじめに仕事をしているのに。

「最近エムさんが冷遇されてますけど、なにかあったんですか?」
と訊くと、「ここだけの話だけどな」と上司が教えてくれた。

エムさんはパートなので、残業したらその分だけ時給が発生する。
ところが正社員のデザイナーは残業代が出ない。
その結果、パートのエムさんの給料が、同じ仕事をしている正社員を上回ってしまったのだという。

「さすがにパートのほうが給料高かったらまずいだろ。だから残業させないようにした」
なるほどなと合点がいった……、いや待てよやっぱりなんかおかしいぞ。

2015年10月5日月曜日

【思いつき】文学作品の書き出しを混ぜてみる

親譲りの無鉄砲のメロスが激怒すると、そこは雪国であった。


2015年10月4日日曜日

【写真エッセイ】貼っとくだけダイエット


友人宅の冷蔵庫に貼ってあったメモ。

彼はダイエット中なので、体重と体脂肪の記録をつけているらしい。

21日……記録スタート。
22日……順調。
23日……計測を忘れる。
24日……2日ぶりに記録。
25日……記録なし。
26日……記録なし。
27日……記録なし。
28日……記録なし。

よし!
彼のダイエットが成功しない方に5,000円!

2015年10月3日土曜日

【ふまじめな考察】プロングホーンとオークション

 プロングホーンという動物がいる。北米に生息する、シカみたいな生物だ。
 こいつは走るのがものすごく速い。
 地上でもっとも速く走るのはご存じの通りチーターだが、チーターは完全な短距離走者で、トップスピードは数秒しか維持できない。
 ところがプロングホーンはスタミナもあり、時速60km近いスピードで5分以上も走りつづけることができるのだ。おまけに最速で90km近く出せる。

 すごい。
 なにがすごいって、こいつらは無駄に速いってことだ。もう完全に無駄。
 ふつう動物が走るのは、獲物を追うときか、捕食者から逃げるときだ。ところがプロングホーンは草食だし、北米にはそんなに速く走る肉食動物はいないのだ。
 北米にはコヨーテが生息しているが、こいつらの最速は65kmくらいだ。おまけにスタミナはない。
 プロングホーンが90kmも出さなくても悠々逃げきれてしまう。完全に駿足の持ち腐れ。
 オークションで、7万円で落札できる商品に9万円も払っちゃってるのだ。もったいない。

 ところでプロングホーンよ、最近、歳のせいか小走りするだけですぐ息切れするようになってきたぼくに、余分に持っている20km/h走る力をぼくにわけてくれないか。
 あとできたらオークションで余った2万円も。


2015年10月2日金曜日

【写真エッセイ】「エンジン バッテリー 違い」で検索


 友人たちと車で出かけていると、車のエンジンがかからなくなった。
 みんなで車を押してみたが、スンともいわない。
 戦争が起こったら自分は真っ先に死ぬだろうなと思うのはこんなときだ。

 ある友人はいろいろ触ってどうやらバッテリーに問題がありそうだと突き止めた。
 別の友人はスマホで解決策を検索した。
 またある友人は別の車と故障車をケーブルでつないで、バッテリーを蓄電(?)していた。
 みんなが力を合わせたおかげで故障した車は息を吹き返し、再びエンジン音を響かせた。
 その間ぼくが何をしていたかというと、みんなが車を直そうと奮闘している姿を「みんながんばっとるねぇ」と言いながらムービーで撮影していただけだ。
 いちばん迷惑なタイプの人間だ。
 非常時にまったく役に立たない、いやそれどころかただ目障りなだけのタイプだ。

 だが臆面もなく言い訳をさせてもらうと、なにしろぼくはエンジンとバッテリーの違いもよくわかっていない。故障車を直せるはずがない。
 こんな人間が免許を所有していて公道で車を走らせているわけだから、つくづく物騒な世の中になったものだ。まったくもって嘆かわしい。

 今年で58歳のぼくの母親は
「わたしが使うと壊してしまいそうで怖いから」
という理由で、パソコンに指一本触れようとしない。
 HDDレコーダーの予約録画もできないから
「ビデオの録画やっといて。これ」
と云って観たい番組を赤丸で囲った新聞のテレビ欄をぼくに渡してくる。
 ぼくの自動車工学のレベルは彼女のそれと変わらない。
 とうとうクラッチが何のためにあるのかよくわからないままMT免許を取得してしまったくらいなのだ(左足を退屈させないためだと自分のなかでは解釈している)。
 非常時に役に立たないタイプの人間だから(ひょっとすると平常時も、かも)戦争に巻き込まれたら、敵と戦うどころか味方の手で殺されてしまうかもしれない。

 こういうわけでぼくは憲法九条改変に反対するのだが、どうも最近の日本の政治家はエンジンとバッテリーの違いがわからない人のためを思って政治をしてくれないのだから、まったくもって嘆かわしいことだ。