2017年8月29日火曜日

選挙制度とメルカトル図法/読売新聞 政治部 『基礎からわかる選挙制度改革』【読書感想】

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読売新聞 政治部 『基礎からわかる選挙制度改革』

内容(「e-hon」より)
読売新聞・現役政治部記者による書き下ろし。日本の選挙制度の歩み・諸外国の選挙制度のしくみを、ふんだんなデータと共に解説。政治改革関連法成立20年をむかえ、当初の理想とのずれが生じてきている今、選挙制度改革は待ったなしの状況である。小選挙区比例代表並立制の功罪と「1票の格差」判決のゆくえなど、日本人なら知っておきたい重要テーマを基礎からわかりやすく学べる。

以前に、小選挙区制って悪いことだらけじゃない? って記事を書いた。

その考えは今でも変わっていない。
だが現実に今の日本では国政選挙において小選挙区比例代表並立制が採用されている。諸外国でも、小選挙区制を導入している国は多い。

やはり小選挙区にもメリットはあるのだろう。そうでなければ使われるわけがない。
ということで、もう少し調べてみようと思い『基礎からわかる選挙制度改革』を読んでみた。

 日本では1947年から1993年の衆院選まで、一つの選挙区から2~6人が当選する中選挙区制を採用していた。各党が一つの選挙区に複数の候補者を擁立することも可能で、有権者は各党の政策に加え、候補者個人の実績や能力などを基準に投票できた。
 ただ、同じ党の候補者同士は選挙戦で政策の違いを打ち出せず、有権者に対するサービス合戦に陥りがちだった。自民党内では、派閥の所属議員数をいかに増やすかが党総裁のイスを獲得する近道とされ、派閥領袖は選挙資金を提供したり、地元の要望を中央官庁に口利きしたりするなどして、配下の議員の選挙を支援した。これが政官業のつながりを深め、やがては癒着となり、「政治とカネ」の問題が噴き出す。リクルート事件はその象徴だった。

「中選挙区制 デメリット」で検索すると真っ先に上がるのが、この政治とカネの問題。
選挙改革が決行された最大の理由でもあったらしい。
うーん。
そりゃ癒着や贈賄はいかんけど、でも選挙区制の問題とは切り離して考えるべきでは?
「電車では痴漢が発生しやすい → だったら電車をなくせ!」って理論のように聞こえるなあ。

同じ政党だからってすべての政策において考えが一致するなんてありえないわけだし、むしろ政党内で対立があるほうが健全な気がするなあ。




『基礎からわかる選挙制度改革』では諸外国の選挙制度が紹介されているが、どの国もそれぞれ問題を抱えていることがわかる。大選挙区制、小選挙区制、比例代表制、絶対多数制度などいろいろあるけど、どれも一長一短。
  • 民意が反映されやすい
  • 1票の格差が生じにくい
  • 政権が安定しやすい
  • 制度がわかりやすい
これらすべてを叶える選挙制度はありえない。
昔、地理の授業で「メルカトル図法」「モルワイデ図法」「正距方位図法」などいろんな地図の書き方を教わった。これらはどれも一長一短で、方位を正確に表したら面積が狂ったり、面積を合わせたら距離がおかしくなったりする。そもそも三次元のものを二次元で表すことに無理があるわけで、必ずどこかで妥協するしかない。
選挙制度もそんなもので、1億人の意思を数百人に代表させること自体が土台無理な試みなのだろう。

とはいえ妥協するところには優先順位があるわけで、たとえば「制度がわかりやすい」ことなんて真っ先に捨て去っていいことだと思う。
コンピュータで正確に算定できるわけだし、今だって「ドント方式とは何か」を正確に理解して投票している人は少数派だと思う。一般の有権者が選挙制度を理解している必要はない。

優先順位がいちばん高いのはやはり「1票の格差が生じにくい」だろう。1人1票という原則が崩れてしまえば、民意の反映もへったくれもなくなる。
というわけで選挙のたびに「1票の格差をめぐる違憲裁判」がおこなわれてるけど、さっさと直せよとずっと思う。選挙区の人口比を2倍以下にするのなんて、そんなに難しい話じゃない。

結局、いつまでたっても改善されないいちばんの理由は「選挙区を国会議員が決める」ことなんでしょう。自分の党が有利になるように枠組みを決めるに決まっているから(そういうのを「ゲリマンダー」というらしい)。

選挙区や選挙制度は、裁判所のような完全に独立した機関をつくってそこに決めさせたらいいのに。



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