2017年8月23日水曜日

第99回全国高校野球選手権大会をふりかえって

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いやあ、おもしろい大会だった。
ぼくは20年ぐらい高校野球を観ているし、毎年甲子園にも足を運んでいるが、これほどわくわくした試合の多かった大会は1998年の80回大会以来だ(いわゆる松坂世代の年)。



第99回全国高校野球選手権大会をふりかえって


予選から話題の多い大会だった。

センバツの決勝で対戦した大阪桐蔭と履正社が地方予選の準決勝で対戦したり、宮城大会の決勝が引き分け再試合になったり、プロ注目の清宮幸太郎選手のいる早稲田実業が決勝で敗れたりと、なにかとにぎやかだった。

ちなみにぼくは早実が負けることを願っていた。清宮くんを嫌いなわけではないが、彼が甲子園に出たら他のチームの報道がその分減らされることが目に見えていたから。
同様に思っていた高校野球ファンは多いと思う。2001年の寺原隼人のときも偏向報道がひどかったから、同じ事態にならなくてよかった。
甲子園で活躍した選手にスポットライトを浴びせるのはいいが、前評判で大騒ぎするのはやめてほしい。


そんなわけで、熱心な高校野球ファン以外にとっては「清宮くんの出ない大会」というちょっとマイナスな感じではじまった第99回全国高校野球選手権大会だったが、いざ開幕してみるとそんなしょうもない修飾詞はたちまち吹き飛んだ。


開幕戦の彦根東ー波佐見で彦根東が9回逆転サヨナラ勝利を収めたのが、派手な試合が多い今大会にふさわしい幕開けだった。
そこからも派手な打ち合いが続き、ドラマチックな試合展開が多かった。

  • 津田学園7-6藤枝明誠(延長11回サヨナラ)
  • 明徳義塾6-3日大山形(延長12回)
  • 日本航空石川6-5木更津総合(9回に4点とっての逆転)
  • 智辯和歌山9-6興南(6点差からの逆転劇)
  • 天理2ー1神戸国際(延長11回)
  • 明豊9-8神村学園(延長12回表に3点、その裏に4点という大逆転劇)
  • 盛岡大付12ー7済美(両チームに満塁本塁打が飛び出す空中戦。延長10回)
  • 仙台育英2ー1大阪桐蔭(9回2死走者無しからの逆転サヨナラ)
  • 天理13-9明豊(明豊が9回に6点返す猛追)
  • 花咲徳栄9-6東海大菅生(延長11回)

高校野球では大差からの逆転劇が多いとはいえ、1大会に1,2試合ある程度だ。しかし今大会は点の取り合いが多く、大逆転や終盤での猛追が多かった。
息詰まる投手戦もいいものだが、やはり動きのある試合展開のほうが観ていて楽しい。

ちなみに、中京大中京が広陵に対して9回7点差から追い上げを見せた試合も見応えがあった。2009年決勝で9回6点差から1点差まで猛追された中京大中京が、今度は追い上げる側だったことにぐっときた。あの試合を思いだした高校野球ファンも多かったことだろう。

個人的には強い智辯和歌山の復活がうれしかった。2回戦で敗れはしたものの、1回戦で強豪・興南を相手に6点差をひっくり返した試合は、2000年代初頭の手が付けられないほど打ちまくっていた智辯和歌山がよみがえったようだった。『ジョックロック』が鳴り響くのに合わせて次々に鋭い打球が野手の間を抜けていくのにはしびれた。



酷暑と打高投低


ドラマチックな試合が多かった最大の要因は、打力が向上したことだろう。
32年ぶりに本塁打記録を更新した広陵の中村奨成くんを筆頭に、両チームあわせて5本塁打の空中戦あり、史上初の代打満塁本塁打あり、1試合2ホーマーの選手が7人(中村奨成くんは2回達成)もいたりと、とにかくホームランが多かった。
少し前なら1試合2本塁打も打てば怪物と呼ばれていたのに、今大会はそれが7人も。しかも神戸国際の谷口くんや青森山田の中沢くんは2年生。もはや高校野球は新しい時代に入ったと言っていいだろうね。
しかし広陵・中村くんはすごかった。記録だけでなくフォームも美しい。足も速い。走攻守そろったキャッチャーなんてものすごく貴重な人材だからどのプロ球団も欲しいだろうなあ。
しかしケガの影響とはいえ地方大会で打率1割台だった選手が甲子園であんなに打つなんて、つくづく甲子園とはおもしろい場所だ。


打力が向上した原因は「ウェイトトレーニングが強化されてフルスイングする打者が増えたから」なんてしたり顔で解説する人もいるが、どうも信じられない。だって98回大会の本塁打数が37本で、今年は68本。トレーニング方法や戦術がたった1年でそんなに変わるものだろうか?
ボールの反発係数でも上がったんじゃないかとぼくは睨んでいる。プロ野球のほうではこっそり変えていた前科があるからなあ。

以前から、春のセンバツは投手力が重要、夏の選手権大会は打力が勝敗のカギを握ると言われていた。
気候のいい春は好投手が1人で投げぬいて勝ち進むことができるが、夏は予選・本選ともに日程に余裕がないため全試合を1人の投手が投げることはほぼ不可能。また確実にばてるのでどんな好投手でも必ず打たれる。だから控えの投手が充実していて打力のあるチームが有利だと言われている。

昔と比べ物にならないほど夏の暑さが増していることも、打高投低に拍車をかけているように思う。
以前は複数投手をそろえているチームをわざわざ「2枚看板」「3枚看板」なんて呼んでいたが、今ではそっちがあたりまえ。今年出場した前橋育英なんて140km投手が4人もそろっていた。
今大会、香川代表の三本松高校がエース佐藤くんを擁してベスト8まで進んだが、このような絶対的エースに依存するチームはほとんどなくなった。全国レベルの投手が複数いないと勝てない時代になったのだ。
公立高校はますます不利になるだろうがそれもいたしかたない。不利だからこそ公立校が勝つと盛り上がるのだ(三本松も公立校)。


しかしずっと言われていることだが、暑さ対策はなんとかしたほうがいい。
ぼくは毎年甲子園に行って外野席で観戦しているが、ここ数年は全試合観ずに帰っている。あまりに暑いからだ。
観客が昔と比べ物にならないぐらい増えたこと、老化により体力がなくなっていることもあるが、それを差し引いても昨今の暑さは耐え難い。ぼくは日灼け止めを塗りたくり、長袖長ズボン、つばの広い帽子にサングラスという徹底した紫外線対策をして観戦に臨んでいるが、それでも灼ける。半袖で行ったときは日灼けしすぎてほぼ火傷だった。
観客席でビールを飲みながら観ているだけでもつらいのに、ずっと駆けまわっている選手の負担はいかほどだろうか。
高野連は死人が出るまで変えないつもりだろうか。それならそれで「人死にが出るまでは変えません!」と立場を明確にしたらいいと思う。

日程的な事情があって開催時季をずらすのは難しいのかもしれないが、せめて決勝戦を14時開始にするのはやめないか。後のスケジュールを気にしなくていい決勝戦なのに、なぜよりによっていちばん暑い時間帯にやるんだ。
決勝戦は17時開始でナイターにしたらいいのに。選手にしたら涼しいし、準決勝の後に少しは休息をとれるし、何より日中仕事がある人も観戦できるし!(これがいちばんの理由)




日なた側のベンチは不利じゃないだろうか?


甲子園球場では三塁側だけ午前中日陰になり、午後は逆になる。日なた側はベンチ内にいてもずっと陽が当たるのであまり休めないように思う。

ということで調べてみた。

準決勝・決勝を除くと1日のゲーム数は3試合もしくは4試合。
第2試合は正午に近い時刻に始まるので無視。
準決勝・決勝を除く「第1試合の勝敗」「第3・第4試合の勝敗」をそれぞれ調べてみた。

午前中におこなわれる第1試合

 一塁側(日なた側)の4勝10敗

午後におこなわれる第3・第4試合

 一塁側(日陰側)の11勝10敗

というわけで、午後については明確な差はなかったが、午前中におこなわれる第1試合に関しては三塁側(日陰側)がかなり有利っぽい。

さらに "8時開始" のゲームにかぎっていえば、一塁側は2勝8敗と圧倒的に分が悪い。しかもその2勝は準優勝した広陵とベスト8の盛岡大付属が挙げたもので、かなりの力の差がないと「午前中の日なたの不利」をひっくり返すのは難しいと言えるかもしれない。

サンプルが少ないのであと何年かさかのぼって調べたらもっと有意なデータがとれるかもしれないが、そこまでやる気力はないので誰か調べてください。



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