2017年5月12日金曜日

【読書感想】井堀利宏『あなたが払った税金の使われ方 政府はなぜ無駄遣いをするのか』

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井堀利宏『あなたが払った税金の使われ方 政府はなぜ無駄遣いをするのか』

内容(e-honより)
本書は、税金の取られ方と使われ方に関する一般の納税者の素朴な不信感や不公平感を、わかりやすく解明するとともに、あるべき改革の方法を議論する。

2001年発行とちょっと古い本だけど、税金について基本的なことを知りたかったので読んでみた。

いきなり話それるけど、「ちょっと古い本」って書いたけど2001年って16年も前か!
おっさんからすると「ちょっと前」ぐらいの感覚なんだけど。



そんなおっさんだけど、確定申告をしたことがないので自分がどれぐらい税金を払っているのか知らない。

会社をやめて無職になったときに住民税の請求がきて
「無職の人間からこんなにとるのかよ!」
と思った記憶があるけど、ふだんは気にしない。

税金が高いと感じたことはない。他の国の税率を知らないし。

だから税額に不満はないけど、もっとうまくとってほしいとは思う。

もっと金持ちからじゃんじゃんとってくれよ、と。
身ぐるみはがすぐらいいっちゃって、と(やりすぎだ)。

庶民とは無縁の贅沢品にもっと税金かけたらいいんじゃないの?
金の延べ棒とか虎の毛皮とか剥製の鹿とかに(金持ちのイメージが貧困)。


でも「贅沢品に多く課税する」というのは、効率性の観点からはけっしていいことではないらしい。

 一般的に、生活必需品は需要の価格弾力性が低いだろう。日用品や食料品は生活のために必要だから、価格が高くなってもそれほど需要は減らないし、また、価格が安くなってもそれほど需要が増えるものでもない。したがって、ラムゼイ・ルールからは、生活必需品に相対的に高い税率を課すことになる。
 他方で、ぜいたく品は価格弾力性が高いから、ラムゼイ・ルールからは、望ましい税率が低くなる。このような税率の設定は、効率面からは合理化されるが、公平性の観点からは、あまり正当化できないだろう。
 公平性の観点からは、所得水準の低い人が相対的に多く消費する財に低い税率を適用し、所得水準の高い人が相対的に多く消費する財には、高い税率を適用すべきであろう。効率性と公平性はトレード・オフの関係(お互いに矛盾する関係)にある。

つまり、塩は生活必需品だけど、塩の価格が下がったからといって購入量が増えるわけじゃない。辛いの嫌だし。
逆に高くなっても消費量はほとんど変わらない。

一方、ゴルフのプレーに高い税金を課せばゴルフをやめる人が出てくる。
だから高いゴルフ税をかけても全体的な税収アップにはつながらない。

それより塩に高い税金をかけるほうが(効率よく税収を増やすという観点では)いいということになる……。

うーん、理屈としては納得いくけど心情的には納得いかない話だなー。


また「金持ちにめちゃくちゃ高い税率を課す」ってのも庶民からすると溜飲の下がる話ではあるけど、
  • 経済活動を萎縮させてしまう
  • 脱税へのインセンティブが強くなる
などの理由から、必ずしもいいことではないみたい(脱税をしないように監視するのにもコストがかかるしね)。



直感的に受け入れやすい話が、効率的とはかぎらないんだね……。

ポピュリズム系の政治家がよく「公務員の人件費が税金の無駄だから削ろう」と主張する。

この主張も、直感的に受け入れやすいので(公務員以外には)いつも一定の支持を集める。

「どっかで不当にいい思いをしてるやつがいる気がする」
という "おれの暮らしぶりが悪いのは誰かのせい論" の支持者は多い。


「公務員の無駄をなくそう」って、はたしていいことなんだろうか。

それをやって社会全体にメリットがあるかというと、ぼくにはかなり疑問がある。
(一応言っとくけどぼくは公務員じゃない)

"おれの暮らしぶりが悪いのは誰かのせい論" は考えとしては単純で楽なんだけど、それを進めた先にハッピーな未来があるとは思えないんだよね。

足の引っ張り合いになるような気がする。


ぼくが「あんまり公務員叩きをするべきでない」と思うのは以下のように考えるから。

  • 公務員の仕事効率を数字で評価しようとしたら監視コストがかさむ。監視コストこそ何も生みださない無駄な費用だから、少なければ少ないほどいい。
  • そもそも評価になじまない業務だからこそ民間でなく公共でやっている。
  • 叩かれてモチベーションが上がる組織なんてない。
  • よく「民間に比べて公務員はもらいすぎ」と言われるけど、公務員は一定以上の学歴を要求され、さらに公務員試験を突破してその職に就いている。求められるレベルが平均より高いんだから民間の平均より多くもらうのはあたりまえだ。
  • 公務員にお金を回せば民間にもお金が落ちる。公務員の給与を下げたら民間の給与が上がるなんてことはない。

小さい無駄を根絶しようとするのってかえって大きなコストがかかるんだよね。
必要なものまでカットされるし。

ま、ぼくも役所にいくと「これはもっと効率化できんじゃないの?」って思うことはあるし、評価しようのない無駄があるのは事実だと思う。

 自動車やミカンのような通常の財・サービスであれば、価格がその役割を果たしている。つまり、価格の高い財・サービスは社会的な評価も高い。GDPは、さまざまな企業が生産する無数の財・サービスの付加価値を、市場価格で加重してその合計を表している。したがって、走れない自動車をいくら生産しても、その市場価格がゼロになるから、GDPは増加しない。
 しかし、政府支出の場合は事情が異なる。そもそも市場で料金を徴収して供給しないから、政府の公共サービスに価格はない。その結果、GDPの推計では、投入する費用で政府の公共サービスの付加価値をはかっている。
 無駄な公共投資であっても、利用価値の高い公共投資であっても、どちらも同じ一兆円の費用がかかれば、一兆円だけGDPは増加する。たとえば、今年一兆円かけて穴を掘り、来年もう一兆円かけてその穴を埋める公共事業を実施したとしよう。二年後には何も社会資本は残らない。しかし、GDPの統計上は、一兆円の公共事業が二年間継続して、二兆円のGDPが生み出されて、二兆円分の社会資本が蓄積されたことになる。

これはすごい。穴を掘って埋めるだけで二兆円のGDP増加。夢のような話だ!

どっかの政治家が大好きな「民間では考えられない」ってやつだね。

ここまで極端なことはやらないにしても「穴を掘って埋める」に近いことをやっている公務員はいると思う。


でもそれって、公務員のせいなの?
「合法的に楽して大儲けできる方法」があればみんなやるでしょ?
(そんな方法を知っている方はぼくまでご一報を)

「穴を掘って埋める」だけで向上しちゃうような指標を使って方向性を決めているやつらがまちがってるじゃないの?

「入試のカンニングを容認したらカンニングが増えて大学全体の学力が下がった。学生のせいだ!」
って大学が言うようなもんでしょ。
いやおまえがカンニング容認するからだろ、としか思えない。

何も生みださずにGDPを増やすことができるんだったら、GDPは政治の目標に使っちゃいけないと思うんだけどね。



税金って、どんな制度にしてもどこかから不満が出るもんだと思う。

いや、どこかから出るなんてもんじゃない。全方位から出る。

税金上げても文句言われるし、下げても不満が出るし、偏らせてもクレームがつくし、まんべんなくとっても不平が出る。
納税者も企業も公務員も納得いっていない。たぶん税務署の人だって納得してない。
「今の税制最高! これで文句なし!」って思ってる人、日本にひとりもいないんじゃない?

必要だということは誰もが理解しているのに、誰もが納得していない制度

他にこんな制度ないんじゃない?



税金に対する不満って、大きくふたつに分かれる。


・徴収のされ方が不公平
・使われ方が不公平

前者はたぶん永遠に解決しない。
だってみんな「自分以外から多くとってほしい」と思ってるんだから、全員が納得いく方法なんてありえない。

でも使い道の不満が少しでも解消されるよう、著者はこんな制度の導入を提案している。

 納税者の視点は、無駄な歳出を止めるうえで最も重要である。財政問題で国民が受益者負担の原則を最も実感できるのは、納税であ使われ方をある程度る。自らの納税額に応じて、政府の歳出の使われ方をある程度拘束できる納税者投票で、民意がより財政運営に反映されやすくなる。
 もちろん、納税額すべてについてこうしたアプローチはとれない。しかし、所得税について確定申告する際に、使われ方をある程度選択できるようにすることは、実務上も可能であるし、納税意識の向上にも役立つだろう。
 たとえば、納税額の三分の一について、各省庁別の予算(あるいは目的別の大まかな区分)への配分を指定できるようにする。その際に、財政赤字の削減という項目も選択肢に入れるべきであろう。

ふるさと納税制度は市町村を選んで寄付をする制度だけど、それの省庁版という感じだね。

これ、いいねえ。
ぜひやってほしい。


ぼくだったら、軍事費とか今の経済政策とかじゃなく国の借金解消に使ってほしいなー。
あと年金と。

少子化にしても経済問題にしても「将来が不安すぎる」ことに起因してると思うから、「将来への不安を解消する」ことに税金を使ってほしい。

でも年金問題だったら厚生労働省になるわけだけど、厚生労働省にお金を渡しても、目先の票をかせぐために今の高齢者の医療費負担減とかに使われちゃうんだろうな……。




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