2016年11月21日月曜日

【エッセイ】雷天犬捕獲大作戦

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母の奇行について。

うちの母は犬が好きだ。
ずっと犬を飼っていたのだが、かわいがっていた犬が昨年死んでしまった。
しばらく落ち込んでいたのだが、最近また犬を飼いたいという気持ちがふつふつと沸いてきたらしい。
「でもねえ、わたしもお父さんも、もういつ死ぬかわからないし、犬だけ残されたらかわいそうでしょ。だから飼っちゃいけないと思うのよねえ」


犬を飼いたい。でも飼えない。
そんなジレンマを抱えた母はひらめいた。
「そうだ、迷い犬を保護しよう!」

迷い犬を見つけて保護すれば、飼い主が見つかるまでの数日間限定で、犬を飼う楽しさを味わうことができる。
これまでにも何度か迷い犬を預かった経験のある母はそう考えた。


しかし迷い犬などそうそういるものではない。
そこで彼女がとった行動は「カミナリの日に近所をうろうろする」というものだった。

犬を飼ったことのある人は知っていると思うが、たいていの犬はカミナリをものすごく怖がる。
遠雷であってもあのゴロゴロが聞こえたとたんにパニックを起こし、すくみあがり、吠え、走り回る。
首輪から抜け出したり塀を飛び越えたりして脱走する犬もめずらしくない。

それを知っている母は、カミナリの音が聞こえると家を飛び出し、あちこち歩き回って積極的に迷い犬を探しているのだとこないだ電話で話してくれた。
いいアイデアを思いついたと自慢気だ。


しかし。

母もまあまあいい歳だ。

カミナリの日にあてもなくうろうろする老婆を見て、近所の人はどう思うだろう。
「ああ犬好きのおばあちゃんなんだな」と察してくれる人は決して多くはあるまい。

犬を保護するより先に自分自身が保護されないことを、息子としては切に願うばかり。


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