2016年4月3日日曜日

【エッセイ】墓石転倒率

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地震の震度を測るための指標のひとつに
「墓石がどれだけ倒れたか」
というものがあるらしい。

住居だと素材も構造も大きさも形状もまちまちだから、小さい揺れで倒れる家もあれば、大地震にも耐える家もある。
その点、墓だと日本中どこでもだいたい同じ素材・同じ大きさ・同じ形だから、揺れの比較がしやすい。
また、住居だと「これは半壊か全壊か微妙なところだな……」というケースもあって観測者によって判断が異なったりするが、墓石が倒れたかどうかは誰が見ても明らかなので、観測者によるぶれも小さいのだという。


なるほどー。
理にかなっている。
反論の余地もない。

しかし「墓をデータとして扱う」ってなんかふしぎな感覚だ。
ぼくは不謹慎な人間なので平気だが、やっぱり眉をひそめる人もいるんじゃないだろうか。

「墓石倒壊率67%でした」とか言うことに抵抗を感じるんじゃないか。
「東大合格率75%!」とか「お客様満足度97%!」みたいな扱いでいいのか。
ま、いいんだけど。



しょせん墓石なんてただの石の塊だとはわかってるけど、でもやっぱり、その下に埋まっている死人のことが頭によぎっちゃう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  ◆ ◆ ◆ 

えー、アルバイトのみなさん。
今日はお暑いなか、墓地までお越しいただいてありがとうございます。

わたくし、大学で地震の研究をしております。
その研究のため、みなさんには墓石の倒壊率を計測していただきたく思います。

右手のカウンターで、全部の墓石の数をかぞえてください。
左手のカウンターで、そのうち倒れている墓石の数をかぞえてください。
端までかぞえたら、私のところに数を報告してください。集計はこちらでやります。

以上です。
かんたんですね。
なにか質問はありますか?


はい、そこの方。

はあはあ、倒れてる墓石はどうしたらいいか、ですか。
それはそのままにしておいてください。
なんだかかわいそうな気もしますけどね。
今回はあくまで計測が目的なので。
へたにいじって、場所がおかしくなってもいけませんしね。


はい、あなた。

なるほど、隣のお墓にもたれかかっているお墓をカウントするかですか。
それは、倒れているものとしてカウントしてください。
死んでまで、誰かを支えようとする人もいるんですね。立派ですね。
ドミノだったら「なんで倒れないんだよ!」つってがっかりされちゃうやつですけどね。


はい、そこの方。質問どうぞ。

はあ。
地震で家が倒れて亡くなったの人のお墓が倒れた場合は、倒壊率200%になるんでしょうか、ですか。
そんなわけないでしょ。


はい、もう一度あなた。

地震で家が倒れた人の墓石が倒れて、その墓石の下敷きになって死んだ人の墓が倒れなかった場合はどうするか、ですか?

あなた、お墓の事情について考えすぎですよ。
ただ墓石が倒れているかどうかだけ気にしていたらいいんです。


はい、もう一度あなた。

はい?
墓石が倒れて、その下から死んだはずの人が息をふきかえして出てきた場合はそもそも墓と定義することはできないんじゃないか、ですか……?

その場合はですね……。
すぐに救急車を呼んでください!


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